聖火台問題だけじゃ終わらない…“第2の競技場”問題とは?
2015年、迷走に迷走を重ねた新国立競技場問題――。
当初のザハ・ハディド氏によるデザイン案は撤回され、12月には建築家・隈健吾氏が「木と緑のスタジアム」をコンセプトに設計した「A案」に落ち着き、ようやく’20年五輪に向けて新たなスタートを切ったはずに見えた。
ところが聖火台をどこに設置するか、まったく議論されていなかった事実が明るみに出たのだ。
’16年夏季五輪の東京招致運動にも関わり、文科省の部外秘資料を暴露した『悪いのは誰だ! 新国立競技場』(扶桑社新書)の著書で、週刊SPA!で「革命前夜のトリスタたち」を連載中のジャーナリスト・上杉隆氏は、「結局、何も変わっていない」と吐き捨てた。
「迷走を極めたザハ案は撤回されたが、五輪組織委の面々は変わっていない……。あれだけの混乱をもたらしたにもかかわらず、組織委は責任をとって解散するどころか、会長には森喜朗氏がそのまま居座り、世間から厳しい批判を浴びたJSCの河野一郎氏は理事長職を退いたものの、組織委の副会長に収まっている。
誰ひとり責任をとっていない無責任体制が続いているので、同じような過ちが繰り返される……。それでも莫大な国費が投入され、犠牲になるのは五輪に参加するアスリートであり、応援する国民です。世界的な国家事業でもある五輪は、これからも食い物にされるのでしょう」
上杉氏は、今回の問題はこの国独特の社会構造によって起きたと指摘する。
「著書でも触れましたが、責任をとって然るべき地位にいた人は辞めるべきです。責任を取れない社会は、同じ過ちを繰り返す……。
今回の問題は、ただ、うっかり聖火台の設置を忘れていた、という単純なことではなく、無責任体制という宿痾と訣別することができない日本社会が招いた必然と言っていい。
先の大戦では、勝てるはずのない戦争と知りながら開戦に踏み切り、日本は国家存亡の危機に晒されたが、実は今回の聖火台の問題はまったく同じ原因に起因している」
『悪いのは誰だ! 新国立競技場』は、多くの新国立関連本とは一線を画し、’16年夏季五輪の招致活動にまで遡り、歴史的事実を丹念に拾い上げることで、新国立競技場の問題の原因に迫っている。
結局、昨年から迷走を続けた新国立競技場の問題は、収束するどころかいまだに混乱を続けている。それどころか“第2の競技場問題”が燻っていると、上杉氏は明かした。
’20年東京五輪で正式種目に採用されたゴルフの競技会場をめぐり、不可解な動きがあるというのだ。
「一度は、東京湾内と抜群にアクセスがよく、東京都所有のパブリックコースである若洲ゴルフリンクスに決まりかけたのですが、一転して、都心から遠く離れた埼玉の霞ヶ関カンツリークラブに決定されようとしているのです。
若洲ゴルフリンクスは選手村から8km圏内に位置し、羽田空港から15分、東京駅から20分の好立地。ヘリポートも併設され、メディアセンターも近く、都所有のために五輪使用時のコストも低く圧縮できる。
一方、埼玉の霞ヶ関カンツリークラブは高級プライベートコースで、大多数のゴルファーには縁遠いコースです。何より五輪が開催される夏には、体感温度で40度を超える酷暑が予想される……。ここ数年、東京の夏の異常な暑さを考えれば、死者が出てもおかしくないが、仮にそんなことになったら組織委はどう責任をとるのか。
一度、若洲に決まりかけたのに、霞ヶ関に突然変更された経緯も不透明です。日本が五輪史上に汚点を残さないためにも、会場の再考が望まれます」
<取材・文/日刊SPA!編集部>
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