ゴキブリの“殺虫剤耐性”は遺伝子進化していた!? 人類vsゴキブリの最前線で戦うメーカー研究員の苦悩と決意
これまでに約60万匹のゴキブリを飼育室で育てた経験をもち、アース製薬株式会社の殺虫剤カテゴリーでブランドマネージャーを務める渡辺優一氏。
前回は、「やっぱりコワいゴキブリの生態」を紹介した。だが、たんに怖がらせて終わりではない。その正しい対策方法はなんなのか。実際のところ、ネットのまとめ記事などを参考にする人は多いと思う。果たして、本当にそれで大丈夫なのか。
今回は、その真偽と正しい対策方法を聞いてみたい。2017年のゴキブリ対策はコレで解決!
※質問項目はインターネット上のまとめサイトやTwitterなどのSNSで広く引用・拡散されている方法を元に作成させていただきました。
『害虫と殺虫剤の基礎知識』(アース製薬株式会社)によると、ゴキブリの駆除がしにくい理由として、以下のようにまとめられている。前編を振り返る意味でもご覧いただきたい。
ゴキブリの駆除が難しい理由
・夜行性のため駆除行為を受けにくい
・住処が見つけにくい
・暖かく狭い複雑な空間に潜伏
・卵をもったメスはあまり出歩かない
参考:『害虫と殺虫剤の基礎知識』(アース製薬株式会社)
では、私たちが身近で出来る対策としてはどのようにすればいいのか。その基本から聞いてみた。
「まずは、だれでも出来る対策として、なるべくゴキブリが好む場所にしないこと。例えば、食品や食器を放置しない、物陰の掃除、不衛生なものはすぐに処分する、整理整頓を心がけるなど、清潔でキレイな環境を保つことを推奨しています」
とはいえ、なかなかそれが出来なかったりもする。そこで次に頼るのが、ネット上で検索すると出てくる様々な対策方法。渡辺氏は「実際に実験をやって検証してみたわけではないのでなんとも言えない部分もある」ということを前置きしたうえで、それぞれの方法に答えてくれた。
・ネット情報
ネット上に書かれているゴキブリ対策法の真偽
【メスのゴキブリを一匹捕まえてすり潰し、新聞紙などにまんべんなく塗り広げる。一晩置いておくとメスのフェロモンに釣られて、家中のゴキブリがビッチリたかってくるので、そこを好きな方法で一網打尽にする】「生きているメスだったら、効果はあるかもしれません。ですが、すり潰してしまった時点で効果は微妙なのでは。生きている場合は、性フェロモンだったり、仲間を呼び寄せる集合フェロモンなど、そのほかのフェロモンも出ています。しかし死んでしまったら、フェロモンが出るのかどうかも怪しい。ただ、死骸や糞を食べたりもするので、違う要素で寄ってくる可能性はありますが……。ぜひ試した結果を教えて欲しいぐらいです。しかし、そもそもゴキブリが嫌いな人だったら気持ちが悪くて出来ないのでは」 では、生きているメスならば効果があると仮定する。オスとメスを見分ける方法はあるのか。 「いちばんわかりやすいのは、メスは卵を抱えているんです。お尻のほうにカタマリ(卵鞘)が付いているので一般の方でも見分けられるのでは。あとは、メスのほうがひとまわりカラダが大きい。ですが、それは比較しないとわからないと思うので」 つまりメスのほうが厄介な存在ということになる? 「そうですね、オスのほうは死んでしまえば終わりですが、メスの抱えている卵鞘には、クロゴキブリなら22~28個ぐらいの卵が入っており、それが産まれてしまうと一気に増えてしまう。いち個体につき、一生で15~20回も卵鞘を作るので少なく換算しても300匹以上になる。つまり、メスが10匹いたら3000匹になるということです」 それこそ家で頻繁にゴキブリを見かけるならば、相当数がいるのでは……。 「本来は夜行性ですし、警戒心が強いので人間の目に見えるところには出てこないはずなんです。明るいところに出てきたゴキブリは、警戒心がないのか相当マヌケなゴキブリだといえます。それが頻繁に出てきてしまうということは、すでに多くのゴキブリが潜んでいる可能性は否定できません」 警戒心という言葉が出てきたが、続いてはゴキブリが発すると言われる“警告フェロモン”にまつわるネット情報の真偽を聞いてみたい。 ・ネット情報
【家で一匹目に出てきたゴキブリは殺さないで、ゴキブリのすぐ近くを新聞紙とかで全力で叩く。そしたらゴキブリが驚いて警告フェロモンを発して逃げる。遠くの仲間のゴキブリに「この家は危険だ」って伝えて、その家にはゴキブリが来なくなる】・ネット情報
【ゴキブリとファーストコンタクトの場合、まずは殺さずに何かに閉じ込めます(缶とか)。周りをめっちゃ叩きます。とにかく叩いて脅します。そして、殺す。殺したら体液が残らないように廃棄する。他のゴキブリが「この家やばい」となる】「一匹が出す警告フェロモンより、ゴキブリにとっては“住みやすい環境”のほうが優先されるのでは。叩いたところで、そこまで警告フェロモンを出すのかどうかも微妙です」 では、警告フェロモンを活用する方法などはあるのか。 「ゴキブリでは専門家の私でも聞いたことがないですね。ゴキブリが警告フェロモンを出す習性は以前から知られています。しかし、かなりの確率で忌避できるというデータが取れなければ、製品にはなりません。アース製薬で売られている忌避剤などもしかり。他のメーカーも含めて“ない”ということは、裏を返せば、ゴキブリの警告フェロモンの活用としては、大した効果がないとも言えます」
明治大学商学部卒業後、金融機関を経て、渋谷系ファッション雑誌『men’s egg』編集部員に。その後はフリーランスで様々な雑誌・書籍・ムック本・Webメディアの現場を踏み、現在は紙・Webを問わない“二刀流”の編集記者として活動中。若者カルチャーから社会問題、芸能人などのエンタメ系まで幅広く取材する。趣味はカメラ。X(旧Twitter):@FujiiAtsutoshi
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