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ゴキブリの“殺虫剤耐性”は遺伝子進化していた!? 人類vsゴキブリの最前線で戦うメーカー研究員の苦悩と決意

 ゴキブリを寄せ付けない(忌避する)対策として、ネット上ではこのような情報がある。 ・ネット情報
【ゴキブリはコーヒーの香りを嫌い、寄り付かなくなる】
「これも聞いたことがないですね……ゴキブリはハーブ系のニオイが嫌いなんです。ただ、なんのニオイが効果があるのかは、実際にやってみなければわからない。ひと言でハーブといっても様々な種類がある。そこで、私たちは柑橘系の香りも含めて、どれだけゴキブリに効果があるのか、ひとつひとつを地道に研究しています。実験で確実なデータを取り、厚生労働省に認められてこそ、初めて『効果がある』と言い切れるのです。その結果、私たちは天然ハッカ油に辿り着きました」
効力試験室

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 寄せ付けない方法として、ゴキブリはコーヒーよりもハーブのニオイを嫌がるそうだ。渡辺氏は、100種類以上のハーブを使って実験。約8年の月日を費やし、ナチュラスシリーズの忌避剤『天然ハーブのゴキブリよけ』を開発したのだという。 「ハーブのなかには、天然ハッカ油ではないものでもゴキブリに効果があるニオイもあります。とはいえ、それって人間にとっても嫌な場合があるんですよね……。『ゴキブリにとっては嫌なニオイだけど、人間にとっては良い香り』じゃないと家庭やキッチンでは使いたくないと思うんです」  少しずつゴキブリの弱点が見えてきた。ハーブのほかにはあるのか。ネット上には、温度にまつわるゴキブリ対策法も書かれている。 ・ネット情報
【ゴキブリは50度以上の熱湯を被ると即死する。しかも死骸は散らばらず、毒性の強い薬品をばら撒く殺虫剤とは違い、ペットがいる家庭や小さい子供がいる家庭でも安心して使える】
「確実に何度で死ぬとは言えませんが、ゴキブリは熱に弱いと思います。手元に殺虫剤がなければダメではない。ただ、あまりオススメはしませんね」  オススメできない理由とは。ネットの情報では、熱湯のほうがメーカーの殺虫剤よりも安心と書かれているが……。 「熱湯をかけるということは、かなりゴキブリに接近しないといけないですし、火傷をする危険性が高い。水浸しになるので、それを拭くのも大変ですよね……。ゴキブリは熱に弱いですが、冷えることにも弱いんです。当社の製品のナチュラスシリーズでは、マイナス85度の冷却効果がある『凍らすジェット ゴキブリ秒殺』というスプレーがあります(※いわゆる“殺虫剤”は不使用)。ロングノズルなので遠くからでもゴキブリを狙えます。殺虫剤を使えば簡単ではあるのですが、いまは家庭での安全・安心という面から、殺虫剤は使いたくない人が増えています。そこで、天然成分にこだわり、ハッカ油との併せワザで、家庭でもより安全・安心して使えるように配慮しました。もちろん、タダではありませんが、“家庭でどちらが安全・安心なのか”と問われたら、こちらを使っていただいたほうが良いかと」  では、ゴキブリは冷えることに弱いという話だが、このような対策法はどうなのか。 ・ネット情報
【冬場に家の窓を全開にしておけば、家中のゴキブリが死ぬ】
「その前に人間が風邪を引いてしまいそうですが(笑)。まあ、ある程度それに人間が耐えられると仮定しましょう。しかし、家のなかって、温度が下がりにくい場所も多いんですよね。例えば、冷蔵庫の裏などは待機電力によって暖かくなっている。ですので、現実的な対策としては、少し難しい気もします」  余談ではあるが、筆者は小学生の頃、夏休みの自由研究で「クモ(アシダカグモ)」の作文を書いたことがある。クモはゴキブリの天敵であり、ゴキブリを食べてくれる性質があったと記憶している。渡辺氏は、ゴキブリだけではなく、害虫全般の研究をしてきた経験がある。クモを殺さずに残しておくことはどうなのだろうか。 「そうですね、たしかにクモ自体は人間に害はありません(セアカゴケグモなどの毒がある種類をのぞいて)。ゴキブリに限らず、小さな虫を食べてくれたり、本来は“益虫”と呼ばれるぐらいです。とはいえ、確実にゴキブリを食べてくれる保証はありません。また、巣を張ったり見た目が気持ち悪かったり。『クモは残しておいても平気』とは言い難く、それが嫌な人も多いと思いますけど(※クモは経済産業省で“不快害虫”にも指定されている)」
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ゴキブリが出てくる前に対処をしたい…
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