流血退場の選手を拍手で見送る観客に疑問の声【第97回甲子園・高校野球】
高校野球は今年で100年の節目を迎え、早稲田実業(西東京)の「ヤング・ルース」こと清宮幸太郎らが大きな注目を集めている。しかし、夏の甲子園・第4日で起きた観客のある不可解な行動には、疑問の声が広がっている。
“事件”が起こったのは9日、1回戦の中越(新潟)対滝川第二(兵庫)の試合途中のことだった。6回無死一、三塁の場面で、滝川第二の山名大夢二塁手が一塁走者として二ゴロで二塁に到達する直前、遊撃手が併殺を狙って一塁に投げた送球を至近距離で顔面に受けて退場するアクシデントが起こったのだ。
送球を顔面に受けた山名選手はそのままグラウンドへ倒れこみ、額から血が滴っているのがテレビ画面上でもよくわかるほどだった。ほどなくして山名選手は担架で運ばれ、球場内にはドクターが駆け付け甲子園が一時騒然となった。
そして担架で場外へ運ばれていく際、観客からは惜しみない拍手が送られた。恐らくこの拍手は、大量に出血しながらも担架で運ばれる山名選手の“ガッツ”を讃えるものだろうが、それ以上に負傷した選手へ拍手を送る観客の姿には「なんで退場で拍手?」「気持ち悪い」「怖い」などと疑問の声が少なくない。
在阪のスポーツ紙記者は「あの場面でスライディングをしなかったのは『守備妨害』と判定されてもおかしくないのですが、今回は生死に関わるアクシデントだった。スポーツの世界では、無理をしてでも頑張る姿が美しいとされる風潮が根強い。特に高校野球では、真夏の炎天下のなか試合に励むことを余儀なくされ、勝ち進めば投手の連投は避けられない。厳しい環境で必死にプレーする選手の姿を美しいと讃えることには、危うさもあるのではないか」と語る。
幸いにも、救急搬送された兵庫県尼崎市内の病院では「右側頭部の挫創」と診断され、右目の上部を5針縫ったものの、脳に異常はなかったという。大会本部は「右目上部に当たり、約5センチの裂傷を負った。腫れも見られるため、救急車で尼崎市内の病院に向かい、10日以降に再検査を受ける予定」と発表した。
試合は、同点の9回1死一、三塁で、滝川第二の6番・結城宝遊撃手が右前にサヨナラヒットを打ち、中越を下し3年ぶりの夏初戦を飾った。
怪我をしても必死に頑張るスポーツ選手の「美しさ」――それは同時に選手を追い込んでしまうプレッシャーにもなっているのかもしれない。
<取材・文/北村篤裕>
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