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日本のスポーツ界、なぜトラブル続く? 1964年東京五輪から変わらない「勝利至上主義」と「根性論」

東京オリンピック いまだ真相は薮の中である体操協会のパワハラ問題。宮川選手が正しいのか? 塚原夫妻が正しいのか? メディアはこぞって「誰が悪で誰が正義か?」とわかりやすい構図に単純化しようとしているが、「どんな競技にもありえること。問題の根は、日本のスポーツ界全体に通底している」と現場を知るスポーツライターの小林信也氏は語る。

 つまり、今後も第二、第三の宮川選手、塚原夫妻がワイドショーを賑わす可能性が高いというのだ。

「まず国民が知っておくべきなのは、オリンピックという巨大なビジネスと各アマチュアスポーツ協会の恐るべき規模の格差です。例えるなら、トヨタがいきなり小さな家族経営の町工場と取引するようなもの。そこでトヨタ並みの組織とコンプライアンスを要求しても無茶があるというものです。金メダルが期待されるレスリングや体操でさえ数億円規模の助成金が頼りで、そのほとんどが海外遠征費で消えてしまう。運営の手弁当で成り立っている協会ばかりで、その多くは“勘”や“コツ”を建前に無理を通しながらやり繰りしている。重箱の隅をつつけば、ほぼすべての協会がアウトになるでしょう」

 さすがに近年は体罰は減少しているものの、言葉の暴力などは常態化。その根底には1964年の東京オリンピック以降、いまだにスポーツ界に蔓延する「勝利至上主義」と「根性論」があるという。

根性論にすり替えられた「東洋の魔女」


 日本のスポーツ界を支配してきた「勝利至上主義」と「根性論」。その源流は1964年の東京オリンピックにまで遡る。戦後の復興を世界にアピールする場として、国を挙げて催された東京オリンピック。これは同時に、「敗戦のルサンチマンをスポーツが引き受けた」ことをも意味すると小林氏は指摘する。

 つまり、「忍耐と根性によって日本が勝利する」という戦前の日本が夢想したシナリオをスポーツにおいて果たすことで、敗戦の傷を癒そうとしたのだ。その象徴が、当時のソ連を撃破し金メダルを獲得して国民的スターとなった女子バレーボール、通称「東洋の魔女」だ。

「当時、大松監督が鬼のしごきで鍛え上げたかのように、女子選手にスパイクの雨を降らす映像が流されました。しかし、実は大松監督は非常に近代的な指導者で、しごきのように見える映像は反応速度と敏捷性を上げるために効率化されたトレーニングであり、選手にとっては基礎練習よりも比較的楽なトレーニングだったんです。その結果、東洋の魔女の反応速度は男子選手をも上回り、見事金メダルを獲得した。ところが、メディアは『スパルタと根性で獲得した金メダル!』というすり替えを行い、根性論を礼賛したのです」

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政治的、経済的な思惑が支配

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