ステップアップが必要不可欠なワケ
――1人の男に固執しない生き方。なかなか、難しい気もします。
西原:現実はそうじゃないから。就職しても、結婚しても、自分自身がステップアップしていかないと、女は生きていけない。夫が浮気したり、病気になったり、人生、明日何が起こるかは誰にも分からないんですよ。特に年がいくにつれ、女性は全包囲の装備が必要になってくる。語学できて簿記できて家事も完璧で……って役満は無理でも、せめて満貫くらいの装備はつねに目指すべきなの。今日び、可愛いだけ、英語できるだけじゃ子供連れて80歳まで生きていけないですよ。
花房:学歴でも美貌でもなく、自分を養う力。何をやっても食べていける力って重要ですよね。それが自信にもつながる。そしたら自分を取り巻く状況も変わります。
西原:この20年、私はそれだけを目指して生きてきたから。
生島:私は……ほんの少しの運には恵まれたけど、ちゃんと学校へ行って勉強して、学歴ほしかったなあ。でも、働かなきゃ食えなかったから。社会に出てから、よく運がいいとかって言われましたけれど、実際、あたしって運がいいのか悪いのかって考えるときありますよ。今でも。
西原:マリカちゃんは飛び抜けて綺麗だったから。若いうちはそれで良かったの。でも、女の40代の生き方って若い頃とは全然違うでしょ。間違って欲しくないのが、私は高須先生がいなくても、子供に家も、教育も与えられたし、生活水準は変わらない。「金くれくれ」言う女だったら、高須先生に好かれなかったと思いますよ。娘にも、「医者と結婚したかったら、自分も医者になるくらいの気概を持て」と言ってます。年収1千万の暮らしがしたかったら、500万自分で稼げばすぐに500万稼げる男が来るから。
花房:「くれくれ女子」多いですよね。今、モテ本って一杯でてるけど、あれって不特定多数の人に好かれたいってことじゃないですか。それより、一人に大事にされる。一人にとって良い女になる。ここを目指す方が早いと思う。モテはいらない。たくさんの男にちやほやされても、相手できるのは限られてるから。
生島:そもそもマニュアル本で落とせるような男は、たいした男じゃないですよ。いい男はマニュアルの外に。これは女にも言えることですが。
花房:ほんとモテ本読んで、モテたら苦労ない(笑)。
西原:いやいや、あれは恐喝産業だから。恐喝ビジネス!
生島:何ですかそれ。ちょっと脱線しそうですけど(笑)、次回はその話からいきましょう。
【西原理恵子】
1964(昭和39)年、高知県生れ。武蔵野美術大学卒。1988年、週刊ヤングサンデー『
ちくろ幼稚園』でデビュー。1997(平成9)年に『
ぼくんち』で文藝春秋漫画賞、2005年には『
上京ものがたり』『
毎日かあさん』で手塚治虫文化賞短編賞を受賞。『
女の子ものがたり』『
いけちゃんとぼく』『
この世でいちばん大事な「カネ」の話』『
生きる悪知恵』など著書多数。
【花房観音】
京都女子大学中退。2010年「
花祀り」で、第1回団鬼六大賞を受賞し、デビュー。映画会社、旅行会社などを経て、現在もバスガイドを務める。「
まつりのあと」(光文社新書)が絶賛発売中。2016年10月4日には生島マリカ氏と「生身の女2人/濃厚トークライブ」を新潮講座にて開催予定
【生島マリカ】
1971年、神戸市生まれ。最終学歴小学校卒。在日2世。複雑な血筋の両親のもとに生まれる。父親の再婚を機に13歳で家を追い出され、単独ストリート・チルドレンとなる。3度の結婚と離婚を繰り返し、2度の癌を経験。自分が死ねば、同じく天涯孤独になる一人息子への遺言を兼ね、文章を書き始める。2012年夏、真言宗某寺にて得度。著書に『
不死身の花―夜の街を生き抜いた元ストリート・チルドレンの私―』(新潮社)
|
『まつりのあと』
欲望の向こう側に広がる儚い人間模様が描き込まれた連作短編集
|