なぜインドで洗濯洗剤「アリエール」が広まったのか?―― 150万人の父親を動かしたP&Gの戦略PR
日本でも男女共同参画の機運が急速にあがってきた。働きたくても働けない女性が300万人もいると言われる。女性の管理職はいまだ1割程度で、これは世界的にも低水準だ。そんな中、2016年4月に「女性活躍推進法」が施行された。女性活躍の具体像が見えてきた一方で、日本男性の意識改革という課題もある。「女性の社会進出」を促進するには「男性の家庭進出」も欠かせないというわけだ。日本の男たちもいよいよ、「イクメンのさらにその先」が求められるということだろう。
さて、戦略PRの「6つの法則」のひとつに、「おおやけ」というのがある。PRすべき商品を、大きな社会問題と結びつけることで売りにつなげるやり方だ。おおやけの問題である、「男性と家事」を洗濯洗剤のPRに結びつけた、インドの成功例を紹介しよう。「家事をしないインドのお父さん」にスポットを当てたP&Gの洗濯洗剤「Ariel(アリエール)」の「Share The Load(シェア・ザ・ロード)」というキャンペーン。いわば、洗濯(家事負担)を夫婦でシェアしましょう、という意味である。
まず前提として知っておきたいのは、インドのお父さんは本当にちっとも家事を手伝わず、「仕事から帰ってきたら、まずはチャイでしょ。それが何か?」という状態なのだということ。この「おおやけ」の問題に目をつけ、ユーチューブなどで動画を流したりSNSを使ったりとウェブ上での仕掛けを主軸とし、最終的にはお父さんたちに意識改革をしてもらおうという狙いだ。
動画ではまず、母親たちが家で仕事をしている娘の話をしている。「娘も仕事が忙しくてね、お婿さんよりも高給取りみたいなのよ」「私たちの頃とは大違いよね」。そんな他愛のない話をしていると、奥からお婿さんの叫ぶ声が聞こえてくる。「ねぇ、ぼくの緑のシャツ、なんで洗濯していないの??」。一斉に振り返る母親たち。そこで次のメッセージが出てくる。「なんで洗濯は女だけの仕事なの」
インドも女性の社会進出が進み、高学歴、高収入の女性が増えた。にもかかわらず、家事はすベて女性の仕事。まるで日本と同じような現状がインドにもある。つまりこのキャンペーンは男性の家庭進出を促進するのが狙いなのだ。まずは話題性のある動画を流すことで火をつけたのち、マスコミにキャンペーンを張った。その結果、討論番組が組まれて、いかにお父さんたちが家事をしないかディスカッションされ、このテーマは大いに盛り上がった。
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『戦略PR 世の中を動かす新しい6つの法則』 「商品力」や「宣伝力」だけでは、もはや人は動かない。 |
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