極道出身の作家が“天性の番長”を描く!「生野が生んだスーパースター文政」の壮絶半生
――『文政』で単行本を出そう、という気持ちはいつ頃から芽生えたのでしょうか。
沖田:1年くらい前ですかね。刑務所に務める兄弟に、本人が主人公となった本を届けることが叶えば喜んでくれるんじゃないか、と思い書き始めました。最初はR-zoneさんで「文政シリーズ」として連載させてもらって、それから書籍の話が決まって。手紙を通じて毎月やりとりしてるので、「兄弟の話、書くで」と知らせてはあります。反応は……照れくさそうでしたが(笑)。
――かなり赤裸々に描いている印象を受けました。人のベンツやロレックスを「貸せ」と言って強奪するのは、よくあることだと(笑)。働くことをよしとせず、博打とオンナの放蕩生活が日常で、その原資はファミリーのメンバーが裏稼業で稼いだお金というのもすごい話です。ただ、有事には滅法強い。実の兄がヤクザの大親分の賭場で食い物にされているのを救った場面は読んでいてゾクゾクしました。ファミリーの一員である情報屋も窮地を救ってもらい、特別な恩義を感じていると。沖田さんも文政の大きな魅力に「どうにもならない状況を、なんとかしてしまう」力を挙げていますが、これは天性のものなのでしょうか。
沖田:天性でしょうね。頼り甲斐のある男と言ったら良いのでしょうか。言葉に重みがある人というのは、実際大勢いると思うんですよ。でも彼の場合は、日常的な会話からして、言葉に迫力があるんです。その迫力は、聞くものの立場によっては、もの凄く力強く感じてくるんですよ。この男だったら、なんとかしてくれるんじゃないかとね。
――ファミリーの面々が文政に抱く忠誠心も、なかなかない関係だと感じました。もめごとを収めるため、文政のかわりに指を詰めてしまう女子も出てきて……それだけの魅力は、どこからくるのだと感じますか。
沖田:それこそ生まれもってのもの。天性でしょうね。本の中にも登場するストリートファイターKと狂犬Nと文政の三人は、幼年期からともに過ごしてきたんですよ。ケンカが一番強かったのは、ずば抜けてKです。そして一番危ないのが、現在も殺しで服役中のNです。でも番長は幼年期から文政なんです。理屈ではないと思います。そういう男というのが、実際にいるんですよ。
――現在、鳥取刑務所に服役中ということですが、本人はすでに本を読まれたのでしょうか?
沖田:先週に彼が務める刑務所に郵送したばかりですので、返事は届いていません。無事に刑務官の検閲をパスしていれば、今頃、読んでくれている頃ではないでしょうか。懲役中の兄弟が喜んでくれたら、と思って書いた本ですが、彼のような生き方があることもまた、多くの人に知ってもらいたい。生活は放蕩ですが、兄弟はカネやモノに執着しないんです。大金を失ってもその瞬間から前しかみていない。お金だけじゃない、悲しいことがあっても、どこまでも明るく前を向いて振り返らない。そういう強さや華があるから、人が集まってくるんでしょうね。大阪アウトロー界の「生きる伝説」は、今も刑務所で会う人会う人を魅了しまくり、ファミリーを増やしていると聞きます(笑)。いろんなエピソードをぎっしり詰めたので、手に取ってもらえると嬉しいですね。
【沖田臥竜】
兵庫県尼崎市出身。日本最大の暴力団組織二次団体の元最高幹部。前科8犯。21歳から29歳までの8年間服役。その出所後わずか半年で逮捕され、30歳から34歳までまた4年間服役と、通算12年間を獄中で過ごす(うち9年間は独居)。10月初旬に刊行した「生野が生んだスーパースター 文政~現在、男道にて修行中~」(サイゾー)が好評発売中
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『生野が生んだスーパースター 文政』 インターネットで話題の小説がついに単行本化。これがリアル大阪裏社会だ! ![]() |
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