恋愛・結婚

ガールズコレクションおじさんの悲劇――鈴木涼美「おじさんメモリアル」

「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは自らを饒舌に語るのか』(青土社)、『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』(幻冬舎)などの著作で「性を商品化する」女性たちの内面を活写し注目されている文筆家の鈴木涼美が、「おじさん」をテーマに日刊SPA!で連載する「おじさんメモリアル」第13回!

【第13回 耳をすませば(盗聴器に)】

 私は、若干買い物依存ぽいところがなくはないのだけど、その代わりに買ったものへの執着やコレクション趣味みたいなものは皆目ないので、森永卓郎の特集とかテレビで見てもまったく理解に苦しむ。同じように、私の友人のケイコが3年ほど前から付き合っているオジサンのことも、そもそも理解に苦しんでいた。

 付き合っているとは言ってもケイコはケイコで一緒に住んでいる平成生まれの美容師(の資格を持っている自由人≒フリーター)のカレシはいるし、オジサンはオジサンで勿論既婚者なのでアレだが、とにかく3年ごしに月に1度ペースで会っては、20万円ほど融資をしてくれるオジサンがいた。もともとエロ産業に勤めていたケイコだが、現在の主たる収入はそういったオジサマ方からの直引き(風俗店や紹介業者を通さず直接会ってご飯でも食べてからセックスしてお小遣いをもらうこと)で成り立っている。

 で、そのオジサンとケイコは、ケイコが一瞬だけ勤めたソフトSM系デリヘルを介して知り合った。別に特段SM趣味があるようには思えないプレイをさらっとした後、店の規定の金額とは別にチップを10万円もくれたオジサンに、すっかり機嫌をよくしたケイコは、快く電話番号とLINEのIDを交換し、よかったら今度食事でもしようという普段なら堂々と既読スルーするような内容のLINEにも好意的に返信した。その月のうちに誘いにのって食事にでかけたが、当然セックスと20万円のオマケつきで、その時点でケイコのお気に入りオジサン名簿のごくごく上位にランクインしていた。

 珍しいのはそこからで、そのオジサン、個人的に2人で会ってオショックス(お食事+セックス)する、ということもなくはないのだが、大抵はANAコンチやグランドハイアットのロビーに、ケイコと同じように拾ってきた女の子4〜5人をいっぺんに呼び出し、全員でレストランで食事をして、その時の一番のお気に入り女子、もしくはその日抱きたいと思った女子一人と部屋にあがって、他の人は解散、というお決まりのコースを好んでいたのだという。つまり、彼の愛人たちは互いに食卓をともにし、交流し、連絡先まで交換していたりする。複数プレイをするわけでもなく、食事だけでも5万円のお小遣いをもらえる、とあって、その奇妙な晩餐は拒絶する者も少なく続けられてきた。

⇒この続きは連載をまとめた単行本「おじさんメモリアル」で

【鈴木涼美(すずき・すずみ)】
83年、東京都生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。09年、東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。専攻は社会学。「身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論」(幻冬舎)発売中。現在は日経新聞を退社し、執筆業を中心に活動。幻冬舎plusにて「愛と子宮が混乱中 夜のオネエサンの母娘論」を連載中。LINEブログはhttp://lineblog.me/suzukisuzumi/

(イラスト/ただりえこ 撮影/福本邦洋)

おじさんメモリアル

著者が出会った哀しき男たちの欲望とニッポンの20年
日刊SPA!の連載を単行本化


「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか

慶応大学環境情報学部卒。東京大学大学院学際情報学府修了。本書がデビュー作。

身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論

「お乳は生きるための筋肉」と語る夜のおねえさんの超恋愛論




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