ある日突然「孤独死者の遺族」に。その時あなたはどうする?
―[[中年の孤独死]が止まらない!]―
「生活保護世帯や、行旅死亡人といった方のご葬儀を行政から承ることが、近年非常に増えてきておりますが、そのなかにも孤独死といった単身で亡くなられた方のご遺体をお預かりすることが増えてきたように実感しております」
そう語るのは、首都圏に自社式場を展開する葬儀社、東京葬祭の尾上正幸氏だ。同社では首都圏に60を超える霊安設備を準備しており、自宅に安置ができないという遺族のニーズに対応しているが、年末年始などは、その要望に対して施設が足りないということもあるという。
葬儀社の霊安室は通常、一般の葬儀で自宅に遺体を安置できないという人のためにあるが、安置から身内の特定まで時間を要する孤独死者への対応により、一般の葬儀の要望にも影響が出てきているというのだ。
その一方で、ある日突然「孤独死者の遺族」となる場合も増えている。孤独死が起こると、警察はほとんどの場合で親族を突き止める。ある日突然、会ったこともない親類が孤独死したことを警察から告げられ、葬儀や納骨の費用を負担しなくてはならず、困惑、困窮するといった事例もある。
「一人で亡くなった方のご葬儀を誰がやるのかというと、兄弟姉妹ならまだいいほう。最近では、葬儀を甥っ子姪っ子や、かなり遠縁の方がされることも増えてきていて、当事者が葬儀を精神的にも金銭的にも負担だと感じるケースもあります。子供の頃に会ったきりの遠方のおじちゃんが孤独死したと警察から連絡が来て、結局、葬儀費用の負担を拒否した方もいます」
こうした孤独死者の葬儀は、火葬のみという簡素なものが多い。自ら孤独を選択し、孤独死する覚悟ができている人には好都合のようだが、尾上氏はこう提言する。
「葬儀の形態が簡素になったとしても、誰の手も借りずに葬られる人はいません。死後はその人の意思で物事は動かせないんです。少なくともその後を託せる人間関係や縁を繋げておくことが大切です」
【尾上正幸氏】
東京葬祭取締役。著書に『実践エンディングノート~大切な人に遺す私の記録~』(共同通信社)、『本当に役立つ「終活」50問50答』(翔泳社)がある
取材・文/菅野久美子 取材協力/マインドカンパニー ダイウン リリーフ千葉ベイサイド店
― [中年の孤独死]が止まらない! ―(かんの・くみこ)ノンフィクションライター。最新刊は『超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる』(毎日新聞出版)『孤独死大国 予備軍1000万人のリアル』(双葉社)等。東洋経済オンライン等で孤独死、性に関する記事を執筆中
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