人間椅子・和嶋慎治、初めて明かす結婚の過去――自伝『屈折くん』に込めた思い
――読んでつくづく思ったのは、和嶋さんって真面目な方なんだな、ということ。<僕に足りないのは苦労である>という記述もありましたし、ときにはまるで自分を罰するかのように、苦境を選んだりしているような節もありますよね。
和嶋:どうでしょう。不真面目なところ、だらしがないところもたくさん持っていますから。理由があるとすれば、物心ついたころから「自分は甘やかされて、不自由なく育った」という自己認識があったんです。本家の長男ということもあって、とくに祖母には可愛がられました。愛をたくさんいただいて感謝するとともに、一方でそれがコンプレックスになっているというか、何となく引け目を感じたまま大きくなってしまったんですよね。
――引け目ですか。
和嶋:ええ。子どものころから本が好きだったので、いろいろな本を読みましたが、偉人の伝記なんかを読むと、みんな何かしらの障害や困難を乗り越えて、苦労の末に本物になっているんですよね。
――伝記は脚色されて、ドラマチックに描いている部分も多いと思います。
和嶋:大人になれば、そういうこともわかりますけど、子どもだったので、わりと真に受けたのかな。偉い人たちは、他の人と比べて自分に足りない部分であったり、いま置かれている苦境であったりを、本人の不断の努力で補い、克服しているのだなと。芸術でも発明でも、何か人の役に立つことを成し遂げるには、苦労することが必要らしい。自分は甘やかされているから、何だか申し訳ない……くらいには思っていましたね。
――やはり、真面目ですよね。
和嶋:ですかねぇ。ただ、子どものころに身についたその手の感覚って、大人になってもなかなか抜けないもので。たとえば、いま僕は独身なのですが“家庭を持つ”という、世間的にいちばんまともな道を歩めていないのも、自分にどこか引け目があって「結婚なんて無理」と考えているところがあるからかもしれません。ただ一方で、結婚しなければ責任を負わなくてもいいんですよね。責任から逃れたいので、楽な方へと流されているだけともいえる。
『屈折くん』 人間椅子の中心人物、和嶋慎治による初の自伝!! 幼少期からバンド結成、現在までを明かす!! |
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