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中古の軽自動車に乗る慎ましい現代ヤクザの姿――「見栄を張ればタカられる」崩壊したヤクザ社会

 関東某所の寂れた私鉄駅前。事前に“指定暴力団二次団体幹部候補”と聞いていた記者は、それなりに緊張して男性の到着を待っていた。だが、程なくして現れたのは、10年落ちの古い軽自動車に乗った四十代のくたびれた男性だった。 「あ、どうぞどうぞ。狭い車で申し訳ない」  なるほど、この男性は“使いぱしり”なのか……と疑わなかったが、その男性こそが幹部候補の山崎氏(仮名)であることが判明し、思わず仰天した。幹部候補である男性は、三十代で複数の飲食店を立ち上げ、今ではコンサル会社も経営するビジネスマン、いわば“インテリヤクザ”であるとも聞いていたが、上下ジャージにサンダル姿で軽自動車の運転席に座る山崎氏は、どうみても普通のおじさんだ。  彼が経営する飲食店の事務所内に入ると、照れ臭そうにこう話した。 「ヤクザらしい格好をしなきゃって思うけどね、見栄張ってれば親に目をつけられ、逆に食われて(タカられて)しまう。情けない話だけど、こうやって“自衛”しないと生き残れないのよ」 手元 山崎氏によれば、ヤクザの世界において「親が子に食わせる」のは当然で、子は親の代紋(看板)を背負わせてもらうことでシノギ(仕事)が出来ることから、子は親にいくらかのカネを上納した。しかし暴力団への締め付けが厳しくなる一方の現代、ヤクザのビジネスモデルは完全に崩壊したと断言する。 「事業で成功を収め、トヨタのセルシオで事務所に乗り付けたことがあった。だが、親分や兄貴連中が『儲かっとるな、もっとアガリ(上納金)よこせ』と。『儲かるシノギがあるなら手伝わせろ』ということで、飲食店の経営を横取りされたこともある」
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金があることがバレてもいいことがない
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