奥田民生“ゆるくマイペース”の裏に見える、慎重な自己演出
7月15日に公開されたアニメ映画『カーズ/クロスロード』で、日本版エンドソング「エンジン」を歌っている奥田民生。一昨年立ち上げた自身のレーベル「ラーメンカレーミュージックレコード」からの初ソロシングルで、ずっしりと腹に響くサウンドはやはり頭一つ抜けている。
https://youtu.be/ylt2e5DbhUo
さらに9月16日には映画『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』(原作は渋谷直角の同名マンガ)が公開される予定で、改めて注目を集めている状況だ。
ところで、奥田民生というと、“ダラダラ”とか“マイペース”などの形容詞といっしょに語られることが多い。タモリや井上陽水などの年長者がそのように形容してきたのもあり、刷り込まれてしまった面はあるだろう。
実際、音楽を聴けばうなずけるところであって、今回の「エンジン」もトム・ペティを彷彿とさせる楽曲で、このようにルーズな足取りの8ビートを刻める日本のロックミュージシャンは奥田民生ぐらいのものだ。
しかし、同時に不思議にも思うのだ。彼のプロデビュー曲、ユニコーンの「Maybe Blue」(1987年)を聴くと、これが同一人物による作品だとにわかには信じられないからだ。どこをどうイジれば、ビジュアル系バンドのような“お耽美系”の曲から大陸的なロックチューンへと変われるのだろうか?
もちろんミュージシャンだって年齢を重ねるごとに成長するし、変化もするだろう。たとえばエリック・クラプトンだって、音楽だけでなく、着ている服から髪型まで違っている。
ただし、ふらついていたクラプトンの音楽遍歴でさえも一本スジが通っている。元をたどれば行き着く根っこの存在がある。そのような感覚が、「Maybe Blue」と「エンジン」との間には見いだせないのだ。ユニコーンでデビューした当時と、52歳の奥田民生とでは、まるっきり違ってしまっている。つまり、「Maybe Blue」を良しとする感性のまま成熟し年を取ったとしても、「エンジン」を書く人間にはならないということだ。

奥田民生は“ダラダラ”しててカッコいい、と言われるが…
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