奥田民生「ユニコーンとソロは差があったほうがいい」
渋谷直角氏のコミックから生まれた映画『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』が16日からいよいよ公開。主人公・コーロキの憧れの存在こそが、奥田民生だ。劇中でも彼の名曲がいたるところで使用されているのだが、今回はデビュー30周年を迎えた彼の音楽活動に絞って直撃インタビューを敢行。52歳となった彼がアーティストとして目指すべき道とは? 独創的な楽曲と自然体な生き様で長らく我々を魅了し続けてきたカリスマの素顔に迫る――。
――ラーメンカレーミュージックレコードをつくってから2年がたちました。アルバム『サボテンミュージアム』発売までタイムラグがあったのは、思ったより空いちゃったな、という印象ですか?
奥田:そうでもないですね。もともとレーベルを立ち上げたところで壮大な計画がゼロだったもんですから。いろいろほかが忙しくて。
――そもそもなぜ、デビュー30年の今、自分のレーベルでやりたいという考えに至ったんでしょうか?
奥田:レコード会社にはお世話になってましたし、今でもユニコーンではお世話になってますから。もともと自分で切り盛りするようなタイプでもないし、別に不満もなかったわけで、だからそのままずっとやってたんですよね。でも、CDを売るというのがメインの動きになってしまうと、活動の部分でもパッと思いついたことができなかったり、たとえば音源とか画像をアップしたいときにも、メジャーにいることが何かと足かせになることのほうが多い感じになってきて。ちゃんと手順を踏めばメジャーでもできることなんでしょうけど、やっぱりそこはスピードが遅いので。
――確かに、昔は曲や映像をパッと上げようとしても、できる環境じゃなかったわけですしね。
奥田:今は誰でもできるわけですから、その気楽さがあるといいなって思って。たとえば曲ができたから明日配信で出したい、っていうときに、ピュッとできるかどうかっていうのが大事で。やるかどうかは別にしてもね。だからこの形でやるのがいいのかな、と今は思ってますけど。
――とはいえ、長年手間と時間がかかるメジャーのど真ん中にいたわけで、それを捨てるのは勇気がいることではないですか?
奥田:でも、ずるいですけど、ユニコーンのほうは今もそっちにいて、大きな会場でツアーもやらせてもらってるし、何かをやるにしてもお金を使わせてもらってるので、そういうことがしたいときはそっちで、みたいな。差があったほうがいいかなっていうのもある。同じようなことをやっていると、自分でもどっちがどっちかわからなくなるし。
――じゃあソロ奥田民生は――。
奥田:これからしょぼくなっていくでしょうね(笑)。
――(笑)。フットワークを軽くしておきたいんですかね?
奥田:うん、音的にもどんどんシンプルになっていっているわけですし。何もかもがシンプルになっていってほしいなっていう気はするね。たとえばこのアルバムは、ライブのときにバックバンドのメンバーと出している音を録音したっていう、ただそれだけのものなんです。「いろんなものをそぎ落としてシンプルにしたいと思ってます」とか言ってますけど、そうなっちゃってるだけでもあるわけですよね、年をとって。自然にそげ落ちてシンプルになったと。
※このインタビューは9/12発売の週刊SPA!のインタビュー連載『エッジな人々』から一部抜粋したものです
【奥田民生】
’65年、広島県生まれ。’87年にユニコーンでメジャーデビュー。’94年にソロ活動を本格的に始め、さまざまなアーティストとのコラボやプロデューサーとしても才能をいかんなく発揮。その独自の活動でリスナーのみならずミュージシャンからも愛されている。
取材・文/兵庫慎司 撮影/三浦憲治 メイク/国沢 拓(sakura)

ユニコーンとソロは差があったほうがいい
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