名門大卒ニューハーフ嬢がヒッピーの楽園にあるマッサージ店で働く理由「就職よりも先に…」
「マリファナなんていうのはタバコみたいなノリで、やるのはもっぱらLSDだったな」
5年前にラオスのバンビエンという町を訪れた元バックパッカーでジャンキーのAさんは、当時をこのように振り返る。世界中のバックパッカーにとって、大麻を混ぜ込んだハッピーピザやバングラッシーがこの街の裏名物として知られ、バンビエンはマリファナの町として名高い地域。かつてはインドのゴア地方と並ぶ“ヒッピーたちの楽園”としてひっそりと機能していた。
しかし、安価にそして合法同然に多種多様なドラッグが手に入るということで、Aさんのようななんちゃってヒッピーが大挙して押し寄せた。だが、本来のヒッピーたちは「精神の旅」をしているわけであって、なにも錯乱状態に陥って口から泡を吹きたいわけではない。次第にヒッピーたちは姿を消し、バンビエンはたちまちドラッグ中毒者の町に変わり果てたという。
2016年、東南アジアを旅していた筆者。先人バックパッカーたちの話を検証するため、筆者もこのバンビエンを訪れたのだが……。ドラッグで股のゆるみきった欧米人女性とあわよくば、などと考えていたものの、街にいるのはあろうことか人差し指で手招きするレディーボーイ(ニューハーフ)ばかりだった。旅行者の町には決まって乱立しているいかがわしいマッサージの店頭に並ぶのは、これまたレディーボーイ。ダミ声ではあるものの、色気たっぷりの口調で「カモーン、マッサ~」とひたすら営業をかけている。
では、噂のドラッグ事情といえば、「ハッパ? ハッパ?」と連呼するバイタクの運転手がいるくらい。町で唯一の盛り場である「サクラバー」では、キマっている白人旅行者も見られるものの、みな基本的には片手にビアラオ(ラオスのビール)というスタイルだ。インターネットの情報によると、ハッピーメニュー(※マリファナ入りのフード)を提供している店は現在もかろうじて残っているというが、筆者が見た限りでは、以前ほど気軽に食することはできなくなっているようだった。そう、ハッパの町バンビエンはオカマの町へと変貌を遂げていたのだ!
そんなバンビエンにサニーという1人のレディーボーイがいる。彼女の仕事は美容師兼マッサージ師。この町には、レディーボーイたちが1日のはじまりに女へと変身するための美容サロンがいくつかある。彼女の仕事ぶりは真剣なもので、ああでもないこうでもないと鏡を何度も見ながら、お世辞にも美しいとはいえないレディーボーイたちをなんとか女に仕上げていく。とりわけ、サニーの美意識は強く、そのダミ声を除けば女だといっても遜色ない見た目だ。
サニーの日課は、仕事が終わった22時頃、サクラバーに繰り出しては好みの男に声をかけることだ。白人男性と手をつないで歩いていたこともあるので、逆ナンパの成功率は意外と高いようだ。そしてご多分に漏れず、筆者も彼女からのアプローチを受け続けていた。
じつは泊まっているホテルの部屋が、サニーの働く美容室の2階にある。ホテルと美容室のオーナー(熟年レディーボーイ)が同じなのだ。そのため、嫌でも日に2回は顔を合わせることになり、世間話を交わした後、彼女は決まったように腕をつかんできては「タダでいいからマッサージさせて」と懇願する。次第に顔見知りのような存在となり、筆者も彼女のことが気になりはじめていた。そして、ある日のことだ……。
名門大卒ニューハーフ嬢がヒッピーの楽園にあるマッサージ店で働く理由
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