1972年生まれのショーンが定義するところの“リック・フレアー”――フミ斎藤のプロレス読本#103【ショーン・ウォルトマン編エピソード3】
フレアーは、ショーン=シックスがプロレスと出逢った時点ですでにチャンピオンだった。少年時代の記憶のすみずみまでフレアーの映像がこびりついている。
ハゲ頭の“アンダーソン”に扮したナッシュが、涙ながらの大芝居で“ヘニング”にホースメン入りを嘆願する。「首がイカれちまってオレはもう試合ができない」「だからオレの代わりにホースメンの伝統を引き継いでくれ」「オレのポジションをユーに譲るよ」とお涙ちょうだいのセリフがつづく。
泣き崩れるデカ鼻の“フレアー”。大物FA“ヘニング”は“フレアー”と“アンダーソン”の求めに応じ、めでたくフォー・ホースメンの正式メンバーとなった。ショーン=シックス演じる“フレアー”は「ホーッ!」と奇声を発しながら十八番のフレアー・ウォークを披露。スキットはここで終わった。
ホンモノのフレアーがすぐそばにいる。nWoのドレッシングルームでは自分が座っているところから3メートルの距離にハルク・ホーガンがいる。ホーガンとフレアーが共存しているバックステージは、やっぱりレスリング・ビジネスのいちばん高い山の頂(いただき)ということなる。
「アイ・ドント・フィール・イットI don’t feel it(べつにそんなに特別な感じはしないよ)」
ショーン=シックスは、そういう場所に自分がいることをそれほど奇異なシチュエーションとはとらえていない。
兄貴分のナッシュとスコット・ホールは「否定しろ、否定しろ、トラディッションを否定しろ、リック・フレアーを否定しろ」と耳元でささやくけれど、フレアーはやっぱりそこにいて、つねにフレアーを演じている。
ショーン=シックスがプロデュースしたスキットは、結果的にWCW首脳陣の大ひんしゅくを買ってしまった。実物のフレアーがショーン=シックスに腹を立てた。
フレアーの逆りんに触れちゃうなんてとっても光栄なことなのだ。ショーンはそこにいるフレアーを、ホーガンを、そしてnWoのシックスというキャラクターを客観視していた。
※文中敬称略
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文/斎藤文彦
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