トップレベルの試合で飛び出す驚異的なテクニック
大会のハイライトとなったのは二日間の大会のラストに行われた、リオパラリンピック銀の団体日本代表「火の玉ジャパン」と、同大会金メダルのタイ代表との戦い。銀メダル獲得の雄叫びで有名になった廣瀬隆喜選手もしっかりと代表に名を連ねています。まさに、世界トップの戦いです。
このクラスは一番不自由が少ないということもあり、ボールの勢いも強く、狙いも正確です。ボール一個分の隙間があればそれは「オープン」という認識のようで、両チームがその隙間にガンガンボールを通してきます。距離感もピタリと止めるのが当たり前で、ちょっとのオーバーやショートさえもミス扱いとなり、試合展開に影響を与えていきます。
そういった
戦略性に寄与しているのがボールそのものの違いだといいます。
一見すると色違いの同じボールを投げているようで、実はボールそのものにも違いがあるのだとか。実は
表面の皮が硬いものや、柔らかいもの、滑りやすいもの、滑りにくいものを使い分けているのだそうです。
皮が硬いものは、形が整っているので真っすぐ正確に転がすのに向いている。皮が滑りやすいものは、ボールの勢いが殺されないので、邪魔なボールを弾いて吹き飛ばす投擲に向いている。さらに、皮が柔らかく、滑りにくいボールを使うときは、
カーリングでは考えられない驚きのテクニックもあるそうで………

ボールの上に、ボールが乗った!
これは偶然ではなく、意図的なものだといいます。ジャックボールの周辺を相手チームのボールが囲っていて近づけないときも、相手のボールに乗り上げて止まることでジャックボールに上側から接近できる。これはカーリングでは想定できない、ボッチャならではのテクニック。
こうした
ボールの差による違い、試合展開などをあらかじめ見越して選手たちは持ち込むボールを変えます。「この選手は硬いボールを2球持ってきたぞ」とか「この選手は相手ボールを弾く役目だから、全部滑りやすいボールだ」みたいなことを、持ち込んだボールから予想することもできる。なんだか
対戦カードゲームのデッキ作成みたいな感覚。身体が不自由な人でもできるゲームにしたぶん、頭を使う要素がより多く取り入れられているのかもしれません。
そんな日本代表とタイ代表の試合は一進一退の攻防。日本が先制すればタイが逆転し、また日本が追いつくという形で交互に点を取り合い、最終6エンドを迎えた時点で4-4の同点。さらに最終エンドでも両チームの素晴らしい投擲がつづき、日本側が最後の投擲がジャックボールにピタリと寄り添うと、ホームの観衆からも大きな歓声が上がりました。
しかし、熱戦はまだ終わらない。審判がコンパスを取り出してどのボールが近いかを確認し、さらに両チームのキャプテンを呼ぶと、日本代表の杉村英孝キャプテンは思わず苦笑い。なんと、両チームのボールがジャックボールにくっついていたようで、このエンドはそれぞれ1点ずつを取り合うという痛み分けに!

ゴッチャゴチャした結果、ジャックボールに両チームのボールがくっついたもよう
勝負の決着はタイブレークに持ち込まれます。タイブレークでは、あらかじめコート中央に置かれたジャックボールをめがけ両チームがボールを投げていきます。ここまでタイ代表の「近場にボールを置く作戦」に苦しんできた日本代表でしたが、タイブレークは投げやすい距離でのゲームとなり、優位な展開に。一発逆転を狙うタイのミスを誘発し、日本代表が競り勝ちました!

熱い決着に笑みもこぼれる
一通り見て感じるのは、
ボッチャはパラリンピックに限られたものではないということ。不自由な人だけのためのルールではそもそもなく、
身体の状態にかかわらずイーブンにプレーできるようになっています。日本代表チームには女性選手も混ざっていますし、
男女や体格、身体的不自由に縛られない競技です。
筋トレとか走り込みとかを頑張らなくてもよさそうですし、ぶつかって痛かったりする要素が一切ないのも素晴らしい。むしろ「出る」ほうでワンチャンありそうな気がしてきます。ボールさえ買えば場所も体育館で十分ですし、かるーい気持ちで目指しちゃってもいいかもしれませんよね!

会場展示のボッチャボールセットは5万9000円だそうです!
ボッチャはマイボールを使うルールとのことで、ボールは各自でお買い求めいただきます!
青チーム用も赤チーム用もセットで5万9000円なら、すぐ始められそうな気軽さ!
敷居が低い!