「どっちが攻めているのかすらわからない」初心者でも『QUINTET』を120%楽しむ方法<桜庭和志×中村大介インタビュー>
桜庭和志プロデュースの新格闘技イベント「QUINTET」が始動――。このニュースに心躍らせた格闘技ファンは多いと思うが、筆者の心は複雑だった。なぜなら本大会が、“グラップリング”ルールだから。グラップリングの試合を見たことはあるが、正直どちらが攻めているのかすら、初心者にはよくわからない……。
グラップリングとは組技のことで、簡単に言うと“打撃禁止の格闘技”。QUINTET(クインテット=「5人組」という意味)は5人1チームで闘う団体戦で、5対5の勝ち抜き戦方式で行われる。団体戦がドローの場合には代表戦を行う、完全決着制だ。
桜庭の試合を一度でいいから生で見たい。団体戦というのも面白そうだ。しかし、とにもかくにもグラップリングというものが分からない。分からないならプロに聞け! ということで、贅沢にも桜庭和志と、本大会で桜庭のチームメイトに抜擢された中村大介に話を聞いてきた。
――グラップリングを見ていて、どちらが攻めているのか、わからないことがあるんです……。
桜庭和志(以下、桜庭):雰囲気ですよ。顔の表情を見てください。上になっていても焦っている奴は、下から圧力をかけられている。相手が緊張しているかどうかって、試合をしていてもすごい分かりますから。
――なるほど! 表情なら、私にもわかりそうです。
桜庭:要は騙し合いです。みんな嘘つきです。表情もそうだし、呼吸もそう。息を吐いているときは人間って強いんですよ。吸っているときは弱い。だから押さえ込んだときに相手の呼吸を聞いて、息を吸っているときに技をかける。組技は相手と離れていないので、呼吸が分かるじゃないですか。パチスロの目押しのようなものですよ。タイミングを取る。トントントン、ガッと。
中村大介(以下、中村):自分はまだまだ、そこまでの域には達していないです。格闘技は気持ちだと思ってますね。一本極めようという気持ちが強いほうが極めると思う。すごい抽象的な言い方なんですけど、気迫というか。そういうものが出ている選手になりたいですし、そういうところも見ていただけたらなと。
――「初心者でもこれだけ抑えておけばグラップリングを楽しめる」というポイントを教えていただけますか。
桜庭:基本的には「首を絞める」か、「どこかの関節を逆にする」かなんですよ。肘を伸ばせば腕十字だったり、形が違うだけで、結果的に関節を逆にするだけなんです。どうやって関節を逆に持っていくか、もしくは頸動脈を締めるかの話です。人体の構造を少し理解すると、わかりやすいかもしれないですね。
中村:整体に行ってバキバキやられると、痛さがわかるんじゃないでしょうか。
桜庭:先生、靱帯伸びてますよって(笑)。関節技を極めるっていうのは、関節を逆に持っていって、靱帯を伸ばす感じなんですよね。手首とかものすごい痛いんですけど、足首とかだとあんまり痛くない。パキパキっといったりはするけど。そこはもっと深く入れば分かると思います。
――闘う上でのコツは?
桜庭:どれだけフェイントをかけるかですね。フェイントをかけて、腕だったら腕、一箇所に全身の力をバーンと持っていく。腕十字だって、手だけ取ってるんじゃなくて、全身の力を使っているんです。どれだけ相手の力の入らない方向に、騙して騙して、そっちのポジションを取るか。首を取るフリをして足を取るとか、足を取るフリをしてバックを取って首を絞めるとか。そういう騙し合いだと思います。あとは自分の得意パターンがあって、相手をそのパターンにはめ込むんですよ。自分の流れの中にはまると全部わかるので、そこに最後スコーンとはめる感じです。
中村:お互いのはめ合いですよね。
――理屈が分かるとすごく面白いです。今回、グラップリングの大会をやろうと思ったのはなぜですか。
桜庭:もう歳だから、打撃がイヤなんですよ。痛いから。
中村:痛いですよね(笑)。自分は逆に最近、打撃寄りになってきてます。
桜庭:えっ! QUINTET、大丈夫?
中村:大丈夫です(笑)。元々、グラップリングというかプロレスがすごい好きでやってきたんですけど、いつの間にか「組まれたらイヤだな」と思うようになってきて、ちょっとバランスが崩れてきてたんです。そこでこういうお話をいただいたので、原点回帰というか。最近はプロレスの技術を研究してまして、それを追求していくいい機会だと思ってます。
桜庭:アメリカでヘンゾ(・グレイシー)と試合をしたとき、アメリカのほうが柔術の人口が多いのであれですけど、すごい盛り上がってるんですよ。それで、日本でもできないかなと。日本でやるんだったら、ワンマッチよりも団体戦にしたほうが分かりやすいかなと思ったんですよね。
尾崎ムギ子/ライター、編集者。リクルート、編集プロダクションを経て、フリー。2015年1月、“飯伏幸太vsヨシヒコ戦”の動画をきっかけにプロレスにのめり込む。初代タイガーマスクこと佐山サトルを応援する「佐山女子会(@sayama_joshi)」発起人。Twitter:@ozaki_mugiko
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■QUINTET.1ーGrappling Team Survival Match-
www.quintet-fight.com
【開催日】4月11日(水)
【開場時間】17:30(予定)
【開始時間】18:30(予定)
【会場】東京・両国国技館
www.quintet-fight.com
【開催日】4月11日(水)
【開場時間】17:30(予定)
【開始時間】18:30(予定)
【会場】東京・両国国技館
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