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洋楽メタルを聴かなくなった日本の若者たち――原因はサッカーのサポーターのゴミ拾いか?

洋楽ロックを聴かなくなった若者たち

 ところで近年、ロックTシャツが流行っているようだが、若者は自分が着ているTシャツにプリントされているロック・バンドのことを知らないケースも少なくないようだ。それらがスタンダードなバンドであるにもかかわらず……。まして、リスナーを選ぶメタルに到達するだろうか……?

ユニクロは2017年に、エアロスミス、メタリカ、レッチリ、ピストルズをフィーチャーしたロックTシャツのコレクションを展開した。

 筆者が音楽を聴き始めた80年代は、クラスメイトの多くが洋楽ロックを聴いていた。もちろんメタラーもいた。同級生のほか、兄や姉、学校の先輩、洋楽雑誌、TVやラジオなどで、洋楽に触れたことを契機に聴き始めることが多かった。音楽そして洋楽は、若者の趣味の上位に位置していたのだ。筆者の体感では、洋楽人気は、『週刊少年ジャンプ』(集英社)連載のマンガと並んでいた(アニメや『ジャンプ』以外で連載されていたマンガは、はるか下位だった)。  しかし現在、若い世代が洋楽メタルを聴き始める入り口は一体どこなのだろう……? 洋楽メタルを聴いている同級生は少ないだろうし、兄や姉、学校の先輩も同様だ。その上、洋楽雑誌およびTVやラジオなどのマスメディアも斜陽化しており、洋楽を拡散できる環境にはない。  政治・社会問題やスポーツなどはコミュニケーション・ツールとして汎用性が高い。そして20年ほど前から、多くのマンガ・アニメも、コミュニケーション・ツールとして機能するようになった。しかし、音楽はどうなのか。20世紀の頃は、多くの若者がKISSやBon Joviなどを聴き、自分の好きなアーティストについて熱く語り合うことを楽しんでいた。しかし近年、洋楽はすっかり影を潜めている。  筆者は5年ほど前、知人が集まるパーティで洋楽メタルの話題を振ったことがあるが、「このバカ、何言ってんだ?」みたいな空気が流れた。一般層にとってもはや洋楽メタルは縁遠いものなのだ。Judas PriestやIRONMAIDENですらアウトだろう。ここまで来ると、口コミによる情報拡散も難しい状況と言える。今、音楽を聴かない人からも門前払いされることなく、少しは話についてきてくれるかもしれないのは、X JAPANやBABYMETALなどであろう。
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「日本人の高いモラル」と「ロックの反モラル」は両立するか
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(やまの・しゃりん)漫画家・ジャパメタ評論家。1971年生まれ。『マンガ嫌韓流』(晋遊舎)シリーズが累計100万部突破。ヘビメタマニアとしても有名。最新刊は『ジャパメタの逆襲』(扶桑社新書)

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ジャパメタの逆襲

LOUDNESS、X JAPAN、BABYMETAL、アニメソング……今や世界が熱狂するジャパニーズメタル! !  長らくジャパニーズメタルは、洋楽よりも「劣る」ものと見られていた。 国内では無視され、メタル・カーストでも最下層に押し込められてきた。メディアでは語られてこなかった暗黒の時代から現在の世界的ブームまでを論じる、初のジャパメタ文化論。★ジャパメタのレジェンド=影山ヒロノブ氏(アニソンシンガー)の特別インタビューを掲載!

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