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洋楽メタルを聴かなくなった日本の若者たち――原因はサッカーのサポーターのゴミ拾いか?

「日本人の高いモラル」と「ロックの反モラル」は両立するか

 今年開催されたロシアW杯において、日本の選手がロッカールームを清掃して退出していたことや、サポーターのゴミ拾いが賞賛されたことは記憶に新しい。日本は、他国から賞賛されるほどモラルが異様に高い国なのである。  そのようなモラル先進国においては、ロック・アーティストらしいヤンチャな武勇伝があっても、決して持て囃されず、逆に単なるDQN(ドキュン)扱いされ、嫌悪されることだろう。昔はカッコイイとされていたヤンキーも、今となってはクソバカの極致である。何にせよ、ロック・アーティストが生きづらいここ日本において、洋楽ロックおよびメタルは、ヤンキーと同じように衰退するのは仕方がないことなのかもしれない。

洋高邦低から邦高洋低の時代へ

 何より、洋楽が衰退したもっとも本質的な原因は、欧米文化に対する憧れが消え去ってしまったことにあるのではないか。あくまでも筆者の考えに過ぎないが……。  戦後しばらくの間、日本には、国産品は質が低く、質の高い舶来品に価値があるとする共通認識があった。日本よりも欧米のほうが先に進んでおり、そこに羨望の眼差しがあった。音楽の場合も同様で、日本の音楽よりも先に進んでいる洋楽を聴くことがカッコイイとされていた。だからこそ筆者は、若かりし頃、カッコイイ趣味を持つために洋楽メタルを選択したという側面も多々あった(そこには、オタク趣味がバカにされていたことに対する反動もあった)。  さて現在、若者は、洋楽をカッコイイと思っているだろうか? 欧米に対しての羨望の眼差しがあるのだろうか? 情報化社会になったことで、現在の若者は、良い部分と悪い部分を判断できるようになった。他国の政治情勢や民度も知っている。その結果、「欧米にも結構ダメな部分あるよね」「日本の方が全然マシだよね」「日本人のほうが民度高いよね」などと思うことが少なからずあるだろう。もはや、欧米文化に対する憧れがないのだ。必然的に、洋楽に対する興味・関心も失われてしまったと言える。  もはや洋楽は、今の若者にとっては「俺たちのもの」ではない。あくまでも上の世代のものに過ぎないと言えるだろう。
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若者にとっての「俺たちの音楽」は?
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(やまの・しゃりん)漫画家・ジャパメタ評論家。1971年生まれ。『マンガ嫌韓流』(晋遊舎)シリーズが累計100万部突破。ヘビメタマニアとしても有名。最新刊は『ジャパメタの逆襲』(扶桑社新書)

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ジャパメタの逆襲

LOUDNESS、X JAPAN、BABYMETAL、アニメソング……今や世界が熱狂するジャパニーズメタル! !  長らくジャパニーズメタルは、洋楽よりも「劣る」ものと見られていた。 国内では無視され、メタル・カーストでも最下層に押し込められてきた。メディアでは語られてこなかった暗黒の時代から現在の世界的ブームまでを論じる、初のジャパメタ文化論。★ジャパメタのレジェンド=影山ヒロノブ氏(アニソンシンガー)の特別インタビューを掲載!

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