パチプロから見たギャンブル依存症とは?
大きな理由の一つとして、他のギャンブルとの比較で参加者の数が圧倒的に多いことがあります。全体の数が多ければその中で、いわゆる依存症、つまり、ドップリとのめり込んでニッチもサッチもいかなくなってしまっている人の絶対数も必然的に多くなるわけです。「日本人のギャンブル依存症者の約7~8割はパチンコ・スロット関連」ということがよく言われますが、これは実際にそうだと思います。依存症者の絶対数が多くなるのは、ギャンブル全体の参加者の中で人数的に大きな比率を占めるのがパチンコ・スロット関連だからです。
では実際にどれほどの人数のギャンブル(パチンコ)依存症者がいるのか?という話ですが…。
数値を推定するにあたってはまず「ギャンブル依存症とは何なのか?」という「そもそも論」について考えなくてはなりません。大前提としてまず認識して頂きたいことは、この「ギャンブル依存症」という単語は学術用語でもなければ何らかの専門用語でもない、単なる俗語(マスコミ用語)であり、「病名」でもないということです。世界基準での病名として「Gambling Disorder(ギャンブル障害)」という言葉がありますが、これがイコール「ギャンブル依存症」かというと、全くそうではありません。
「ギャンブル依存症」の明確な定義付けはどこにもなく、個々の人がイメージとしてなんとなく持っているだけのもの。そもそもが曖昧な言葉なので、マスコミ報道の見出しはメチャクチャなことになる。2014年に「ギャンブル依存症536万人」というような報道を見たことがある人もいるでしょう。しかし、その時からわずか3年後の昨年秋には「283万人」という報道。これと同じ日に別の新聞を見ると見出しに「70万人」と載っている…。ここまでテンデンバラバラな数字が出てきたら、何が本当のことなのか誰もわかるわけがありません。
なぜこんな混乱が起きるのか?
各推定値はそれぞれ専門の機関が行なったそれなりの調査データを元にしたものではありますが、調査方法が異なっているものだったり、カットオフ値(※どこで線引きするかという基準値)の違う数字が出てきたりすることもあるからです。
とにかく、まずはその言葉の明確な定義付けについてきちんと論議することからやり直さなくては、この混乱の収拾がつくわけはないのです。そもそも「ギャンブル」という言葉の線引き自体がハッキリしていないので、世界的な「(いわゆる)ギャンブル依存症」の研究学会では今は「gambling」ではなく「gaming」という言葉を使うことが主流になってきています。
取り急ぎ解決しなければいけない問題は「ギャンブル依存症問題」そのものではない。「ギャンブル依存症問題が混乱し過ぎている問題」、そして「ギャンブル依存症という言葉が拡大解釈され過ぎている問題」であると個人的には考えています。この混乱、そしてヒートアップするマスメディアの報道は大きな危険性を孕んでいます。「あれも依存症!これも依存症!」という昨今の風潮がエスカレートすればするほど、その中のごく一部しかいないはずの本当に支援を必要とする人達に支援が届かなくなってしまうからです。
世間の誤解をまず解くこと、そして確固たるデータとエビデンスを基にしてきちんとした論議を進めていくことから始めなくては、パチンコもカジノも未来が見えてこないのではないでしょうか。
構成/勝SPA!取材班
SPA!が運営する日刊SPA!内のギャンブル情報サイト「勝SPA!(かちすぱ)」の取材班。Twitter(@kspa_official)
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