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『未来のミライ』アカデミー賞候補の快挙。細田守監督の経歴を振り返る

あの有名映画の監督降板騒動を経て独立し、『時かけ』からは怒涛の快進撃

 業界に入ってからは順調にキャリアを歩んでいったように思われる細田監督も、挫折を味わっている。ほとんどの人は『ハウルの動く城』と聞けば宮崎監督が制作し、2004年に公開されたスタジオジブリの映画だと記憶しているだろう。だが、この作品はもともと、細田監督が東映から出向する形で指揮を取ることになっていたそうだ。  実際、2000年には制作が一度スタートするも、2002年に細田監督は降板。どのようなトラブルがあったのか公式には明かされていないが、当時スタジオジブリは『千と千尋の神隠し』も並行して制作していたため、細田監督が率いる『ハウルの動く城』チームが人員不足に陥ってしまったという説がある。
ハウルの動く城

もし細田監督版が日の目を見ていたら、どのような評価となっていたのだろうか(画像はブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメントから発売された『ハウルの動く城』DVDジャケット)

 やがて細田監督は2005年に東映を去り、フリー1作目の映画として『時をかける少女』(2006年)を手がけることとなる。原作の約20年後を描いたこの作品は、もともと全国21ヶ所でしか公開予定がなかったにも関わらず大評判となり、約9ヶ月間のロングラン上映のなかで2億円以上の興行収入を記録。2009年公開のSF青春映画『サマーウォーズ』に至っては興行収入が16億円を超え、さらなる大ヒット作となった。  2011年にアニメ制作会社「スタジオ地図」を設立すると、2012年公開の映画『おおかみこどもの雨と雪』では監督のみならず、脚本にも参加。  “母と子”の関係を題材にした同作の制作背景には、『サマーウォーズ』の完成を待たずして亡くなってしまった細田監督の母の存在があったようで、2016年に開かれた是枝監督との対談のなかで細田監督は、「母と過ごした時間を違う形で表現し、映画を通して母に謝りたかった」と語っている。そのため、『おおかみこどもの雨と雪』は売れる映画として企画したつもりはなかったそうだが、興行収入は約42億円と、前作の『サマーウォーズ』を大幅に上回ることに。
 ――2015年公開の映画『バケモノの子』も興行収入58億円強と成功を収めている。冒頭で触れた最新作『未来のミライ』ではビジネス的な数字だけでなく、とうとうアカデミー賞という権威ある賞までをも狙える位置にきた。“細田守”という日本が誇る名監督の動向に、今後も目が離せない。<文/A4studio>
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