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オリンピック選手を上回る記録も!「ガチで人類No.1を決める」最強のパラリンピック競技とは?

「あげれば逆転!」という盛り上がりやすさ

 選手はベンチに寝そべり、足で踏ん張れないかわりに多くの選手がベルトなどでベンチに下半身を固定します。寝た状態でバーベルを台から持ち上げ、一旦胸の前に下ろして静止したのち、真っ直ぐに挙上。三人の審判員が動作をチェックし、腕が曲がっていないか、バーベルが傾いていないか、胸の前でちゃんと静止できていたかなどを見て成功・失敗を判定するという流れ。  多少の慣れは必要なものの、競技自体は一目瞭然のわかりやすさ。「あがったか、あがらなかったか」それだけです。一応、「胸の前でしっかり静止しなかった」とか「あげている途中で腕が沈んだ、傾いた」といった理由で失敗になることもありますが、それも意識して見ればわかる程度のことばかり。試合展開も「より重い重量に挑戦する人ほどあとから出てくる」という仕組みのため、「あげれば逆転!」という盛り上がりやすさがあります。

奥にいる「すし○んまい!」みたいな人を含めた3人の審判が判定します

成功と判定されると白ランプが点灯

不成功と判定されると赤ランプが点灯し、赤2つで失敗に

 競技性のわかりやすさだけでなく、選手のスゴさというのも猛烈な説得力とわかりやすさで伝わってきます。下肢が不自由な選手たちではありますが、それを補って余りあるほどに上半身がデカイ。足はその辺の人と比べてもむしろ細いくらいなのに、上半身は巨大な筋肉を備えており、寝そべって肩をひきつけブリッジのような体勢をとると、まるで風船のように大きく見せます。胸と腹で選手の顔が見えなくなるほどです。  確かに足で踏ん張れないという難はあるのでしょうが、もしも足で踏ん張らなくても身体を支えることができるなら、互角の戦いができても不思議はないなと思います。「足が細いぶん、同じ体重なら上半身により多くの筋肉がついている」という体格の違いによる強みや、日常の暮らしが常に腕と上半身を鍛えることにつながるといった「上半身の強化」に集中できる強みもあります。  弱点となりそうな足の不自由さも、選手によっては下半身を固定するためのベルトすら使わずに、本当に上半身だけでバーベルを持ち上げてしまうような人も。「足の踏ん張り」による影響が少ないフォームや技術を備えることで「全人類ガチの一番」に挑戦できるのかもしれない、そんな夢や希望を感じさせる戦いぶりです。

あ……ベルトとかいらないんだ……

ベルトとかなくても普通に上がった……

不成功と判定されると赤ランプが点灯し、赤2つで失敗に

なきゃなくてもいいっぽい

「足が不自由」かつ「ベンチプレスをやりたいと思った」という組み合わせは決して多くないはずで、実際この大会も各階級の出場選手は5人前後。そんななかでも男子107キロ超級の中辻克仁選手などは200キロという大台の記録をマークしました。この記録は健常者による同条件の大会でも上位争いができるレベルのもの。パラ競技の選手だからといって、まったくひけをとるものではありません。

200キロ成功で力強いガッツポーズ!

「失った」のではなく「特化した」。デッドリフトやスクワットは不得手かもしれないけれど、そのぶんをベンチプレス一本に懸けてきた。そういう特化ができる競技性であり、下肢が不自由なことが逆に強みとさえなっているのが、パラパワーリフティングという競技なのかなと思います。  逆にバーベルの横に構える補助員のほうが、バーベルや重りを持ち運ぶためにパワーアシストスーツなる補助具をつけていたりするのを見ると、そこに健常者とか障がい者とかの区分けは無意味だなとさえ思います。チカラ持ちかどうかは、健常者だからとか障がい者だからとかで決まるわけではないのですから。
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高さを調整できる表彰台
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