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知られざるパラリンピック柔道の魅力。選手の区別は障害の度合いではなく体重だけ

~今から始める2020年東京五輪“観戦穴場競技”探訪 第70回~  フモフモ編集長と申します。僕は普段、スポーツ観戦記をつづった「スポーツ見るもの語る者~フモフモコラム」というブログを運営しているスポーツ好きブロガーです。2012年のロンドン五輪の際には『自由すぎるオリンピック観戦術』なる著書を刊行するなど、知っている人は知っている(※知らない人は知らない)存在です。今回は日刊SPA!にお邪魔しまして、新たなスポーツ観戦の旅に出ることにしました。 「東京五輪で柔道を見るのは難しいだろうが気分だけでも味わいたい」……そんなワガママに答えてくれる期待の穴場、それが視覚障がい者柔道、パラリンピックのほうの柔道です。2020年大会では男子7階級、女子6階級が実施されることになっており、基本的にはオリンピックのほうの柔道と同じ感じ。組んで、投げて、一本を狙う。おなじみのルール、おなじみの競技。会場も同じ日本武道館です。  違うのは出場する選手が視覚に不自由を抱えていることだけ。全盲から弱視まで不自由はそれぞれですが、その辺はいたってアバウトで、見え方によって細かく選手をわけるようなことはありません。選手たちを区別するのは体重による階級だけです。見えないことでの有利不利をことさらに気にしたりはしない「強い者」たちの戦い。うむ、「2020年大会で人気競技・柔道を見た」という雰囲気を味わうには何の不足もないでしょう。  2020年に先んじて、その雰囲気を味わいに向かったのは講道館。かの嘉納治五郎が創設し、世界に広まった講道館柔道の総本山で、視覚障がい者柔道の国際大会が開かれるというのです。しかも、国内で視覚障がい者柔道の国際大会が開かれるのは28年ぶりとのこと。これは全国から視覚障がい者柔道のファンが集結するに違いありません。プレパラリンピックと言ってもいいでしょう。

講道館前に立つ嘉納治五郎先生像

会場前にはジンワリと客足が

知っている人は知っていた! 会場は予想以上の熱気

 むむ、早くも異変が。まだ試合も始まっていない時間だというのに、会場の外で人がたむろしています。僕もよくいろんな人から「どこでそういう大会があるって知るんですか?」と問われるクチですが、この人たちもどこでこういう大会があると知って、ここまできたのでしょう。子ども連れから、大きなカメラを抱えた人、大学生くらいの女子グループなどいろいろな人が集ってきています。  そして、それを出迎える運営側も気合に満ちています。さすが柔道というべきか、場内の案内はしっかり英語が添えてありますし、アナウンスも日本語と英語でそれぞれ読み上げられるなど、まさしく「国際試合」という雰囲気。大挙して居並ぶスーツ姿の関係者たちと、プロ用機材を抱えた中継班の姿。聞けば首都圏のケーブルテレビ局で中継もやるのだとか。うーん、手弁当な感じがまったくありません。

入場してみればスタンドを埋める観衆が500人ほど

中継席には柔道金メダリストの谷本歩実さんの姿も

関係者の奥にある豪華なイスは嘉納先生のイスだそうです ※アマチュアボクシング的な忖度ではありません

手弁当どころか、逆に場内アンケートに答えるとお菓子がもらえるというサービスまで

ポテチとピンバッチと廣瀬順子選手のトレカをもらいました

 視覚が不自由な選手たちが集っているため、いくつか視覚障がい者柔道ならではの特徴も見受けられます。テープを貼って示す試合場の仕切り線は、テープの下に細い棒が埋められており、足で触ったときに「ここが仕切り線だな」とわかるようになっています。選手の入退場の際には主審が腕を組んでエスコートし、「待て」の際に再度仕切り線に戻るときも主審がサポートします。  選手たちが着る柔道着はオリンピックとは異なり全員白。なるほど視覚が不自由なわけですから、白い柔道着と青い柔道着で区別しても意味がない、ということですね。ちなみに、多くの選手の柔道着の袖に赤い丸がついているので「おっ、日本かな」と思ってしまいますが、コチラは「光覚までしか感じられない」ことを示すサイン、つまり「全然見えてないです」ということを示すサインだそうです。さらに耳も聞こえない選手の場合は、赤丸に加えて黄色の丸印もつけるとのこと。日の丸じゃありませんでした。

仕切り線にはうっすらと盛り上がりが

選手の入退場は主審がエスコート。モテ期ではありません

袖の丸印で示す不自由の大きさ具合。ちなみに、「ヒク」と書いてあるのは柔道着のメーカー名です

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柔道を凌駕する死闘に釘づけ
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