更新日:2019年09月27日 15:37
ニュース

“戦争発言”丸山穂高議員の北方領土問題でロシアの高笑いが聞こえてくる/江崎道朗

英米のようなしたたかな対ロ交渉がない日本

 ただし、政治家の誰かがこう言えば、少しは日ロ交渉の進展に繫がったかもしれない。 「返還交渉に対して不誠実な態度をとるロシアに対して、日本国内で不満が高まっている。それが今回の丸山氏の発言の背景だ。ロシアが誠実に交渉に応じないのなら、北方領土の軍事基地化に対して日本も軍拡で対応せざるを得ない」  しかし、英米のようなしたたかな対ロ交渉など、今の日本に望むべくもない。  何しろロシアに対して、まともな反論さえできないのだ。  5月10日、モスクワで河野太郎外相と会談したラブロフ露外相は共同記者発表で「第二次世界大戦の結果を全面的に認めるべきだ」と述べ、会談で北方領土はロシア領であることを認めるよう迫ったことを明らかにした。その際、河野外相は激しく反論すべきだったが、そうしなかったという。  10日に開催された自民党外交部会・外交調査会の合同会議において、『2019年版外交青書』に、’18年版まであった「北方四島は日本に帰属する」との表現がなくなっていることも発覚した。  まともに反論できない河野外相と、口先だけで強硬論を唱え自滅する丸山氏、そしてその丸山氏を袋叩きにするだけで「領土をいかに取り戻すのか」を真面目に議論しない政治家たち。ロシアの高笑いが聞こえてくるようだ。
(えざき・みちお)1962年、東京都生まれ。九州大学文学部哲学科卒業後、石原慎太郎衆議院議員の政策担当秘書など、複数の国会議員政策スタッフを務め、安全保障やインテリジェンス、近現代史研究に従事。主な著書に『知りたくないではすまされない』(KADOKAWA)、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』『日本占領と「敗戦革命」の危機』『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』『緒方竹虎と日本のインテリジェンス』(いずれもPHP新書)、『日本外務省はソ連の対米工作を知っていた』『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』(いずれも扶桑社)ほか多数。公式サイト、ツイッター@ezakimichio

インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保

経済的安全をいかに守るか?


経済的安全をいかに守るか?実践的な入門書が発売!

 ’17年、トランプ米大統領は中国を競争相手とみなす「国家安全保障戦略」を策定し、中国に貿易戦争を仕掛けた。日本は「米中対立」の狭間にありながら、明確な戦略を持ち合わせていない。そもそも中国を「脅威」だと明言すらしていないのだ。

 日本の経済安全保障を確立するためには、国際情勢を正確に分析し、時代に即した戦略立案が喫緊の課題である。江崎氏の最新刊『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』は、公刊情報を読み解くことで日本のあるべき「対中戦略」「経済安全保障」について独自の視座を提供している。江崎氏の正鵠を射た分析で、インテリジェンスに関する実践的な入門書として必読の一冊と言えよう。
1
2
おすすめ記事