更新日:2023年03月22日 10:17
スポーツ

サッカー昌子源をフランスで直撃「W杯の悔しさが海外移籍を押した」

W杯後には高熱に苦しんだ

 プレッシャーも大きかったことだろう。W杯後には40℃もの高熱に苦しんだ。 「クラブから3泊4日の休みをもらっていたのですが、それじゃ切り替えられないと1週間に延ばしてもらい、さあクラブに戻ろうと思ったら熱が出てしまって。きっと一般の男性が50年かけて受けるようなプレッシャーを1か月で一気に受けたというか、緊張の糸がプツッと切れてしまい、普段ひかない風邪をひいてしまったんだと思います」  3月の代表ウィークではW杯以来の日本代表復帰を果たし、コロンビア(3月22日、0-1)戦ではフル出場。20歳の冨安健洋(シント=トロイデンVV/ベルギー)とCBでコンビを組んだことも注目されたが、他人と比較されることは好きではないという。

3月のコロンビア戦では、昨年のW杯以来の代表復帰。冨安とコンビを組み、CBでフル出場した
写真/AFP=時事

「日本人はすぐに人と人を比べたがるけど、それってあんまり意味がないと思うんです。もちろんトミ(冨安)とはコロンビア戦で一緒にプレーして刺激を受けましたし、リスペクトもしているけど、僕はもともと他人を気にするタイプじゃない。  だいたい10代から海外でプレーしていること自体がすごいし、僕なんて26歳で海外に来てアタフタしているわけですから。麻也くん(吉田、サウサンプトン/イングランド)だって、プレミアリーグでもう何年もプレーしているなんて、ハンパない。  ただ、『スゲェ』とは思うけど、気にしてもしょうがないじゃないですか。僕は2人とはタイプが違うし、CBは同じタイプより違ったタイプのほうが互いの長所を生かし、短所を補えるのでいいと思う。だから、誰かと一緒にプレーすることで刺激を受けるというよりも『何か盗めるものはないかな』って。いつもそんなことを考えてプレーしていますね」

来るコパ・アメリカに胸を踊らせるも……

 シーズン後には、20年ぶりに日本代表が出場するコパ・アメリカ(6月14日~7月7日、ブラジル)が控えるが、あくまで招待参加であり、日本サッカー協会に強制招集権はなく、選手の参加にはクラブの許可が必要になる。 「グループリーグからウルグアイ、チリ、エクアドルとガチでできるなんてそうはない機会。それを考えると選手としては行きたい気持ちが強いですが、最後はクラブの判断ですから。もし行ければ楽しみなので、しっかりクラブとは話をしたいと思います」 (※取材後コパ・アメリカのメンバーが発表され、昌子源選手はメンバーには入っていない)  初めての海外生活。言葉や文化の違いに戸惑うことも多い。 「そういえば、車を運転中に2週間で2度も追突されたんです。そのときはたまたま通訳の方が同乗していたので事後処理に問題はなかったですが、もし一人で乗っていたらと思うと言葉の問題もあるし怖いですよね。それと、フランスなら料理に期待したいところなのに、トゥールーズはイマイチで、ガッカリしています(笑)」  フランス語は週に1~2回、クラブで習っており、移動中の車内でフランス語のCDを聴くなどして鋭意勉強中だという。

昌子にカメラを向けると、チームメートもすぐに寄ってくるなど仲のよさがうかがえた。
撮影/栗原正夫

「もちろん、込み入った話は通訳の方に助けてもらっています。あとは、フランスでは何か聞かれても『Ça va(サヴァ≒元気、大丈夫の意。語尾が上がれば、その疑問形になる)』って言っておけばいいと言われているので、それでなんとか凌いでいますね(笑)」  今後の抱負を聞けば、目標を細かく立てるほうではないが、W杯以降は自らの“引退”に思いを巡らせることがあるとも明かす。 「まあ、今後どこか他のリーグに行きたいと思うかもしれないし、ずっと試合に出ていても何かあれば日本に帰りたいと思うかもしれない。すべては自分次第。今はっきりしているのは、来季もトゥールーズでプレーするってことくらいですかね。  ただ、去年は満男さん(小笠原、現鹿島アカデミー・アドバイザー)が引退するのを見て、ちょっと先のことを考えちゃったりするようになりました。満男さんって勝負にこだわるし、負けず嫌いなところもあるし、たぶん対戦相手からは嫌われていた選手だと思うんです。それでも、引退するってなったら敵サポーターからも『お疲れさま』と言われるほど、リスペクトされていた。なかには、誰にも気づかれず引退する選手もいます。  だから、引退するときには満男さんみたいにみんなから『引退しちゃうの?』『まだ、できるでしょ』って思われる選手になっていたいですね。それがいつになるかはわからないけど、最後はすべての日本のサッカーファンに『お疲れさま』と言ってもらって引退できるようなサッカー選手になりたいと思いますね」  3年後に“ロストフの14秒”の映像が流れ、コメントを求められるのは絶対に嫌だと言った。 「俺はカタールに向いています。代表の悔しさは代表でしか晴らせないですから」  昌子は静かに爪を研いでいる。 取材・文・撮影/栗原正夫 ― 昌子 源、フランスにて吠える! ―
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