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あのロングセラー商品に体脂肪を減らす効果が。15年目の真相を聞いてみた

 何かを得ようと思えば、何かを犠牲にしなくてはいけない――。  20代ならいざ知らず中年ともなれば、トレードオフやギブ&テイク抜きで世の中まわらないことは百も承知。それでも、なるべくラクして結果だけを得たいと思うのは、人間だもの仕方がない。飲むだけで痩せる〇〇、塗るだけで若返る●●……。そんなうまい話には裏がありそうで、「本当か?」と疑ってみたくもなるが、なかには「そんなうまい話あるの?」みたいなストーリーもあったりする。

濃くてもおいしいお茶にこだわったら体脂肪を減らす機能が!?

 伊藤園といえば、だれもが知っている飲料メーカーだろう。飲料メーカーというより「お~いお茶」の会社といったほうが、なじみがあるかもしれない。

「お~いお茶」(下段)と「お~いお茶 濃い茶

「おいしいお茶にこだわって世に送り出した『お~いお茶』は、おかげさまで今年発売30周年を迎えました」とは、伊藤園の緑茶ブランドグループ・ブランドマネジャーの安田哲也氏だ。  緑茶といえば日本人が飲むお茶というイメージが強いが、近年は輸出が増加中で、米国、台湾、シンガポール、ドイツなどに多く輸出されている。特に健康ブームの米国では大人気。「ポケモンGO」を開発したシリコンバレーのナイアンティック社でも、社員の福利厚生として、「お~いお茶」が導入されているのは有名な話だ。

「緑茶」の輸出数量・金額は年々増加し、2017年は過去最高の数量と金額を記録した(東京税関2018年4月発表資料より)

米国向けが全体の3割を占めている緑茶の輸出(東京税関2018年4月発表資料より)

 そんな「お~いお茶」シリーズのなかで2004年に登場したのが、上質かつカテキンが豊富な厳選された国産茶葉を使用し、健康カテキン量2倍※で、濃くてしっかりとした渋みと後味のキレが楽しめる「お~いお茶 濃い茶」。※伊藤園緑茶飲料比 「『お~いお茶 濃い茶』」は、渋みがある濃いお茶を求めるお客様に支持され、今年で15周年を迎えたわけですが、最近調べてみたところ、ガレート型カテキンを340mg摂取することで体脂肪を減らす働きが期待できることが確認されました」(安田氏、以下同)  そのため『お~いお茶 濃い茶』は、味や製法はそのままにもかかわらず、ガレート型カテキンの働きで体脂肪を減らす機能が確認されたため今年8月から機能性表示食品として販売されている。とはいえ、一見するとパッケージも同じように見えるが……。

伊藤園緑茶ブランドグループ・ブランドマネジャーの安田哲也氏

機能性表示食品ではなく、私たちはおいしいお茶をつくっているだけ

「そのあたりは、社内でもいろいろな意見が出ました。ガレート型カテキンの働きにより体脂肪を減らす機能とか機能性表示食品を全面に打ち出すことも検討しましたが、やはり、味や製法は変わってないということ、また既存のお客様のことを考えて、従来通りのパッケージに機能性表示食品などの文字を入れる形で落ち着きました」  飲料市場における健康需要を考えれば、体脂肪を減らすことを全面に打ち出し、機能性表示食品として商品を一新するような展開も考えられたはずだ。 「商品を売ることだけを考えれば、そういう展開もあったかもしれません。しかし『お~いお茶 濃い茶』は、もともと機能性表示食品として考えた商品ではありません。『お~いお茶』よりも濃くてもおいしいお茶を目指してつくった商品です。もちろん体脂肪を気にされるお客様にも飲んでいただきたいですが、濃くておいしいお茶を求めているお客様にも、これまでどおり飲んでいただきたいと思っています」

お茶も食品ですから、まずはおいしさ。そして次に健康にいいこと。私たちはお茶のおいしさを大事にしていきたいですね(安田氏)

 昨今は、特定保健用食品や機能性表示食品がブームだが、当初からそういったものを目的としてつくられた商品と「お~いお茶 濃い茶」は、根本的な考え方が違うのだ。 「もともとお茶は、カテキンが豊富な飲み物として健康にいいとされてきました。そんなお茶のおいしさを追及するのが当社の使命だと考えています。当社の製品開発コンセプトにも「自然・健康・安全・良いデザイン・おいしい」の5つがあり、大切にしております。おいしくなければ、いくら体脂肪を減らすことができても飲み続けられません。また、気分転換したいときなども、おいしいお茶じゃないと飲みたいとは思わないでしょう。健康によくておいしくないものより、まずはおいしいもの、そして健康にもいいものを当社はこれからも追い求めていきたいと思います」 「おいしさを追求していたら、実は、ガレート型カテキンの働きにより体脂肪も減らす機能がありました」なんて都合がいい話はにわかに信じられないだろう。「良薬口に苦し」の諺にもあるように、我々は子どものころから、カラダにいいものはマズイとすりこまれてきたせいもあるかもしれない。  しかし、ひたすら、おいしいお茶にバカ正直に向き合っていれば、「おいしさそのまま。実は、体脂肪を減らす」のTVCMのように、おいしくて体脂肪を減らすお茶にたどり着くことだってあるわけだ。世の中には頭がよくてスポーツ万能だったり、美人で性格がいいなんてこともあるわけだし。 <取材・文・撮影/日刊SPA!取材班> 提供/伊藤園
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