早期退職者募集が6年ぶりに1万人を超えるなど、過酷さを増す50代。会社からはお荷物扱いされ、妻からは熟年離婚を切り出され……そんな「50代の試練」に直面する先輩たちから、“憂鬱な50代”にならないための生き方を学び取る!
50代で飛躍した2人の先人が、40代でやっておくべきことを伝授
10年後に憂鬱な50代にならないために、これから40代はどう生きるべきなのか。その最適解を探るため、52歳で自身のライフワークを発見した教育改革実践家の藤原和博氏と、54歳でトヨタ自動車を退社し独立した高田敦史氏による対談が実現した。両氏に、10年後の未来予測から40代サラリーマンの生き方について聞いた。
高田敦史氏×藤原和博氏
藤原:これからの10年を先読みすると、40代会社員にとってもっとも脅威なのはAIやロボットでしょう。私は、中間層が抜け落ち、サラリーマンは「コモディティ会社員」と「レアカード仕事人」に分断されるとにらんでいます。「コモディティ会社員」とは、頭を使わないマニュアルワークが主な仕事で年収300万円前後。一方、社会に付加価値を提供する「レアカード仕事人」は年収800万円以上。その中間はAIによって代替されます。
高田:中年サラリーマンにも超格差の波が到来するわけですね。
藤原:そうです。AIやロボットに置き換えられるのは、コンビニ店員のような低賃金の仕事だと勘違いしている中年男性は多いですが、そうした仕事はテクノロジーで代替するほうがコストは高く、むしろ中間層のメイン業務である情報処理にこそテクノロジーは威力を発揮する。すでに業務移行は始まっていて、年収300万~800万円の中間層の市場価値はどんどん下がっています。レアカード仕事人になれない中年会社員が会社に居座るなら、年収300万円のコモディティ会社員しか選択肢はなくなる。
高田:まったく同感で、私もそうなりたくなくて、役職定年を前に部長職を辞して独立しました。今、改めてトヨタ時代の自分を振り返ると、若いときにさまざまな部署で仕事を経験して、30代後半くらいからは専門領域の知識や人脈を深めることができました。いわゆるゼネラリスト的要素を兼ね備えたエキスパート。このポジションこそ会社員の特権で、レアカード仕事人への道だと思います。
藤原:コンサル業界では、マッキンゼー式やBCG式といったフレームワークがあるけど、トヨタにも“トヨタ流”がありますよね。
高田:そう、データ化されない暗黙知があるんです。仕事を通じ、それを実践的に学べたのは大きかった。ただ、デメリットとして会社の看板で仕事をしている限り、最終的にはコモディティ会社員化の枠組みから逃れられない。私は「高田さん」ではなく「トヨタさん」と言われるのが嫌で、それに危機感を覚えて、いつかは独立しようと考えるようになりました。
藤原:会社から見れば、「トヨタさん」でしかない社員は50代を超えれば“不良在庫”の可能性も。今後、景気が悪くなれば“在庫一掃セール”も辞さないでしょうね。
しがみつくではなく、「会社から盗む」(高田敦史氏)
高田:だからこそ、会社にいるうちにノウハウを盗んで、レアカード仕事人化する必要がある。逆に盗むノウハウがない会社なら、さっさと転職したほうが賢明だと思います。「自分の定年、再雇用までは大丈夫だろう」と考えていても、50代のコモディティ会社員を取り巻く環境はどんどん厳しくなり、リストラ勧告を受けてみじめな思いをするのがオチ。それが嫌なら、自分の力で生きていく道を考えるべきです。