説明する側が「もっと議論すべきことがある」は通らない
宮崎:まあでも、桜を見る会についても前夜祭にしても、「こんな小さな問題でいつまでも騒いでないで、もっと議論すべきことがあるでしょ」と思っている人は多いんじゃないですかね。
金子:国民のみなさんのなかでそう思う人がいるのはわかるし、私もいまや外から見ている立場としてはそう思います。でも、やましい点がないならきちんと説明すれば終わる話なんだから、説明責任を果たすべき立場の与党が「もっと議論すべきことがある」っていうのは通らないですよね。
菅原元経産相の秘書給与問題だってもっと追い込めたはず(宮崎)
宮崎:長期政権の驕りって言われてしまうよね……。
金子:追及している野党も、予算規模としては小さい話だということは十分わかっている。でも、問題の構図がわかりやすいから、一番責めやすい。ある意味「左翼ポピュリズム」というか……「長期政権の驕り」を象徴する出来事として、日ごろ政治に関心がなくて、何となく安倍さんを支持していたような層にも共感を得られるから、大きなチャンスだと考えているんでしょうね。
枝野さんが「このまま解散まで追い込む」と言っているのには驚きましたけど……。野党共闘の準備も整っていなくて、選挙区の調整も済んでない今、本当に解散しちゃって大丈夫なの!?と。でも、政権交代のきっかけにできるくらい共感を得られて責めやすいと思っているんでしょうね。
宮崎:菅原元経産相、河合元法相夫妻、桜を見る会と不祥事の三連続。でも、仮に解散に追い込んでも、「自民党にお灸は据えたいけど野党に期待しようとは思えない」というのが国民感情なんじゃないかなあとも思う。12月の世論調査では、「『桜を見る会』総理説明に納得できるか」については7割以上が「納得できない」(「まったく納得できない」41%、「あまり納得できない」30%/NHK世論調査)と答えていて、内閣支持率も下がっているけど(11月から2ポイント減で45%[NHK世論調査]、11月から7.9ポイント減で40.6%[時事通信社世論調査])、野党の支持率が大きく増えているわけではない(11月から0.5ポイント減で5.5%[NHK世論調査]、11月から0.7ポイント増で3.8%[時事通信世論調査])もんね。
金子:積極支持ではないけどいまだに安倍内閣を支持する人が4割いるのは、野党のふがいなさもあるなと思ってしまいます。
宮崎:菅原元経産省の秘書給与問題だって、もっと追い込めたはずなのに、メディアに「香典、メロン、カニ」というわかりやすいニュースにされちゃって、飽きられてしまった。秘書給与問題については、辻本清美さんなんかは実刑判決が出ているし、野党議員にも後ろ暗いところがある人はいるから追い込みきれなかったのかもしれないけど。
金子:桜を見る会に話を戻すけど、つくづく「永田町の常識が世間の非常識」というか、国会議員には当たり前のように毎年案内が来ていて、「行けたら行こう」くらいの行事としてしか考えず、本来の会の趣旨を完全に忘れたことが一番の問題ですよね。安倍総理が「行政府の長」として主催していたということ、そしてそれは税金によって開催されていたという当たり前のことを忘れてしまっていた。
行政府の長としての立場、自民党総裁としての立場、イチ国会議員としての立場の線引きがいつのまにか曖昧になっていたのではないでしょうか。安倍総理がご自身のことを「立法府の長」と発言して問題になったことがありましたけど、仕組みとしてはわかっているはずなのにいつのまにか「三権分立」の大原則がおざなりになってしまったんじゃないかとすら思う。安倍総理だけじゃなく、多くの国会議員にそういうところはあるんだけど……。
宮崎:国会議員になったばかりのときにすごくびっくりしたのが、各省庁の官僚が勉強会で議員にレクチャーしにくるとき、議員にペコペコして異常に腰が低かったこと。でも、そういうことをされているうちに国会議員が勘違いしていっちゃうていうのはあるかもしれない。まあ、腹の中では国会議員なんてバカばっかりだと官僚は思ってるだろうけど……実際否定しきれないけどね(苦笑)。
金子:大臣だってそうだよね。行政事務の責任者としての大臣なのに、小泉進次郎さんなんかは、あいかわらずイチ政治家としてパフォーマンスをすればいいと思っている。だから入閣以降逆風が吹いているのに、切り替えができていない……。
宮崎:話が変わってきたので今回はこのへんで。次のテーマは「小泉進次郎」氏にしよう(笑)。
●金子恵美 78年、新潟県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、新潟放送勤務、フリーのライター活動、韓国の梨花女子大学校への留学などを経て、07年に新潟市議会議員選挙に出馬しトップ当選。10年から新潟県議会議員を務めた後、12年に第46回衆議院議員選挙に出馬し当選。14年に再選するも、17年の第48回衆議院議員選挙では落選。19年10月6日に政治家引退を発表
●宮崎謙介 81年、東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業後、日本生命保険、インテリジェンス、ドリコム勤務などを経て、11年、自民党京都府第三選挙区支部長に選任。12年に第46回衆議院議員選挙に出馬し当選。14年に再選するも、16年2月に衆議院銀を辞職。現在はテレビコメンテーターなどで活躍する
(取材・文/日刊SPA!編集部 撮影/福本邦洋)