10万円の会員権を設定したパチンコ屋をつくれ!
木曽崇:「社交の場」的なところでいくと、ギャンブルを好きだとメディアで公言してくれているような人を集めて年一回くらい壮大に接待するっていうのは、俺らの業界もやらんといけないことなのかもしれないね。
大崎一万発:それはギャンブル業界全体として、横断的施策としてやっていくべきやないですか。まず伊集院静と、中村玉緒と、和田アキ子は確定でしょ。
ヒロシ・ヤング:それは間違いないね(笑)。今回の本の中でも、10万円の会員権や会員証をつくって、いわゆるプレミアムな会員しか打てないフロアがあってもいいんじゃないか、ということを書いてまして。そういった営業は、法律的には大丈夫なんですかね。通常のパチンコ店でも会員証作るのに500円とかかかりますけど。
POKKA吉田:会員証でカネをとっちゃあかんっていう規制は風営法にはなくて、入会金500円なら常識の範囲内やけど、10万円なんて金額は、著しく射幸性をそそるという判断をされて、ほぼ間違いなく条例違反でアウトになるよ。10万円とるのは現状の風営法では難しそうやから、別の規定をつくらなあかんやろね。
大崎一万発:高いカネ払ってるから玉出せっていうんじゃなくて、空間とかサービスで価値を提供できないか、っていうことなんやけど……。
木曽崇:どうなんだろうね。風営法上、遊技料が定められている業態は麻雀業で、要は、遊ぶために場所代を払うっていうもの。パチンコ業に関してそうした規定がないというのは、場所代をとってはいけないという意味なのかもしれないんだよね。でも、やってはいけないとも条項に書いてないので、やってもいいよねっていう言い方はできる。まぁでも実現したらきっと楽しいよね。
ヒロシ・ヤング:超高級ラウンジ仕様で。酒出すのは条例でNGだけど。
木曽崇:これはかなりグレーゾーンな営業なんだけど、高級雀荘の中には、遊技料とは別に予約料とかの別の名目でお金をとってるところがあるのよ。
ヒロシ・ヤング:銀座辺りの高級雀荘は、会社社長とかものすごいお偉いさんがゴルフ帰りにやって来るんだって。
――競馬にしても、ボートレースにしても、公営競技にはロイヤルルームがありますよね。年会費20万~30万円ぐらいで、飲み物や軽食のサービスがあって。あるレース場の担当者によれば、そういうところを利用している人の中には意外にも100円、200円とか少額で遊んでる方も多いらしいですよ。
大崎一万発:居心地のいい場所だから行くという、それこそ、時間型消費。俺が思い描いているのはまさにそういうことですよ。公営競技にしてもカジノにしても、結局お金持ちをキッチリ抱え込んで産業が成り立っているわけじゃないですか。パチンコ業界にその発想はないんですかね? 庶民の娯楽とは言っても、庶民が貧民になってきている時代やし、ユーザーの知識レベルもますます上がってるから、騙し討ちみたいな商売は立ち行かないでしょ。金持ちをターゲッティングして作り変えていく必要があると思うんやけど。
POKKA吉田:パチンコは戦後からずっと庶民の娯楽としてなりたってきた産業やから、高所得者にどうやって客になってもらおうなんてこと考えるヤツは業界にいない。その発想は目からウロコやわ。
木曽崇:結局、ギャンブル業界ってハイコンテクストすぎて、連れパチとか、一緒にだれかやる、玄人が一緒に連れていくっていう文脈じゃないと、初心者は入れない。急に1人で行って遊ぼう、っていうもんじゃないので。
ヒロシ・ヤング:前に流行ったパチンコ屋のカップルシートも、ユーザーの裾野を広げたっていう意味では貢献してるか。パチンコを2人でしっぽり打てるVIPゾーンなんか作れば需要がありそうだけど。あ、でも個室は風営法的にNGか。
POKKA吉田:パチンコはついたてもNGやしね。遊技以外に重きを置いた営業を想定して、法律を改正していくっていうことは必要だと思うよ。ハイエンド向けに入場料10万円かかるけど、そこだけは遊技機の性能をこんな規制に変えます、1時間で100万円単位の勝負ができるんです、みたいな。
木曽崇:もしくは、グレーゾーン解消制度で解決できるかも。たとえばオンランパチンコなんかは、新しい規定を設けずに「禁じられてませんよ」と確認して認められたものだし。僕も個人的には、インバウンドを狙うよりもハイエンドパチンコ店を作る方が価値があると思いますね。
木曽崇:サミーが発表した「P-SPORTS」についてはどう思う? パチンコ・パチスロを競技にするっていう。第一回はパチスロの目押し対決らしいよね。
ヒロシ・ヤング:パチスロやったら目押しのスキルでシンプルに片付くけど、パチンコはちょっとややこいぞ。ホールでは良しとされないハンドルの止め打ちをメーカーが主催する大会でやらせるのかっていう問題はある。でも、北斗無双ひねり選手権が実現したら熱いわな~。
POKKA吉田:ハンドルのひねりに強弱がついてるのも、ストップボタンがついてるのも、技術介入のためにメーカーがマストでやってるもんでしょ。
大崎一万発:そしたら逆に、メーカーが認めとんのになんでパチンコ屋は禁じとんねんって話になってくるわな。そう考えれば応援のしがいもあるか。パチンコって他の他の国には無いものだから、日本のオンリーワンの産業として世界に打ってでることも可能なわけじゃないですか。そうなったとき、リーダーシップをとれる存在はおらへんのかなと強く思う。
POKKA吉田:パチンコ業界は、産業の規模に似合わず所管の責任者が位の低い人ばっかりなんだよね。ホールの市場規模は年間20兆、粗利ベースでも年間3兆超えと、パラオの国家予算よりもはるかにでかい金額だよ。なのに、警察で表に出てくるのは課長補佐レベルという……。
木曽崇:カジノ業界は関連業種は全てひとつの法律の傘の下に入ってるけど、パチンコ業界は、法律上、ホールしか規制の対象になってないというのが大きいのかも。風営法によるホールへの締め付けについて、メーカーはむしろ「俺らは関係ないから」って言わないといけない場面もあるから。
POKKA吉田:おふたりのような業界で存在感のある人が「P-SPORTS」みたいな新しい試みを応援していったら、業界全体の底上げになるんじゃないの。
ヒロシ・ヤング:我々のパチンコ愛を業界に注入せな。
大崎一万発:やっぱり志の部分が見えると、銭金中心のパチンコ業界のイメージもだいぶ変わると思うんだよなぁ。
言いたい放題の大崎一万発氏、ヒロシ・ヤング氏の共著『パチンコ滅亡論』では、さらにパチンコ業界に対して言いたい放題。POKKA吉田氏&木曽崇氏のスペシャル鼎談も収録しており、こちらもここでは書けない際どい話を連発中! ぜひ手にとって読んでいただきたい。
取材・文・構成/野中ツトム、松嶋千春(清談社)