更新日:2023年05月18日 16:33
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ふんどし一丁の男たちが夜通し暴れる。真冬の奇祭『蘇民祭』とは?

 全国各地に存在する裸祭り。なかでも極寒の東北で行われる奇祭として知られているのが、岩手県奥州市の黒石寺(こくせきじ)で行われる『蘇民祭(そみんさい)』(1月31日~2月1日)だ。  そもそも蘇民祭自体は、毎年1~3月に岩手県内の複数の場所で行われているが、なかでももっとも規模の大きいのが旧暦1月7~8日に行われる黒石寺。ふんどし一丁の男たちが大勢参加し、“全国三大奇祭”や“全国三大裸祭り”のひとつにも数えられるほどだ。  その歴史は1000年以上と古い。祭りの由来はその昔、蘇民将来(そみんしょうらい)という貧しい若者が旅人を泊めてもてなしたところ、後日その旅人が再び現れて、建速須佐之男命(スサノオミコト)と神であること明かす。このときに茅の茎で作った輪を身に付け《我は蘇民将来の子孫である》と唱えれば無病息災が約束されるであろうと告げたとされ、この逸話をもとにしたと伝えられている。

氷点下の中での水行からはじまる

黒石寺の本堂

黒石寺の本堂

 実は、今からの4年前の2016年、筆者は現地を訪問。もちろん、その年の蘇民祭を見るためだ。この年は暖冬で、奥州市内の中心部には雪ほどほとんどなかった。黒石寺は街の中心部から車で15~20分ほどの山側に少し入った郊外にあり、市内よりも少し寒かったがそれでも境内にうっすら雪が積もっている程度。
境内にある蘇民祭の像

境内にある蘇民祭の像

 話をした地元在住の参加者たちは「今年は例年ほど寒くないから助かります」と言っていたが、それでも深夜~早朝は氷点下前後まで冷え込んでいた。ただ、氷点下12度を記録した2018年のように気温がマイナス2桁の年も珍しくないそうで、気候条件による当たり外れはかなり大きいようだ。  こちらは休憩所や駐車場に戻って車で暖を取ることはできたとはいえ、基本的には一晩中屋外。そのためか北海道出身の筆者にとってもかなり寒く感じ、参加者だけでなく観光客にとっても結構キツい。境内では飲み物や食べ物も売られていたが、温かいコーヒーやお茶などを入れた水筒を持って行ったほうがいいだろう。
蘇民祭の最初に行う「夏参り」

蘇民祭の最初に行う「夏参り」

 ちなみに祭り自体は22時と遅い時間から始まるのだが、最初に行われるのが「夏参り」と呼ばれる水業。夏らしい雰囲気ゼロの中、ロウソクを灯した角燈を持って、境内を流れる瑠璃壺川(るりつぼがわ)で身を清め、「ジャッソー、ジョヤサ」の掛声で妙見堂から薬師堂を三巡して厄災消除と五穀豊穣を祈願する。

燃え盛る木の上に登っての厄払いや蘇民袋の争奪戦は必見

祭り前半の山場「柴燈木登り」

祭り前半の山場「柴燈木登り」

祭り前半の山場「柴燈木登り」

祭り前半の山場「柴燈木登り」

 そして、本堂前に長さ五尺の松の木を積み上げて燃やし、この上に登って火の粉を浴びて、山内節を歌いながら身を清め、厄を払う「柴燈木登り」がある。蘇民祭の前半の大きな見どころで、周囲にも火の粉が飛び散るので見ている側も熱かったりするのだが、おかげでこの間はあまり寒さを感じないで済んだ。  その後、黒石寺の住職が蘇民袋を持って本堂に入り、厄災消除・五穀豊穣の護摩を焚く「別当登り」、数え年7歳の男の子2人が大人に背負われて本堂で入って護摩台の松明を三度巡る「鬼子登り」を行う。
蘇民袋争奪戦の様子 ※岩手県観光協会ホームページより

蘇民袋争奪戦の様子 ※岩手県観光協会ホームページより

 これが終われば、いよいよ蘇民祭のクライマックスを飾る「蘇民袋争奪戦」に突入。本堂の中で参加者たちがもみくちゃにされながら袋の中に入っている小間木(こまぎ)を奪い合う。これを手に入れた者は、厄災を免れることができると言われているからだ。
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参加受付は祭り当日0時から
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フリーライター。鉄道や飛行機をはじめ、旅モノ全般に広く精通。3度の世界一周経験を持ち、これまで訪問した国は50か国以上。現在は東京と北海道で二拠点生活を送る。

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2020年 蘇民祭イベントスケジュール&アクセス
開催日時:1月31日22時~2月1日7時頃(蘇民袋争奪戦は、5時~6時半頃)
場所:黒石寺(岩手県奥州市水沢黒石町字山内17)
駐車場:あり(黒石寺前臨時駐車場が31日19時から利用可)
アクセス:東北自動車道・水沢ICから国道4号、奥州街道を経由して、国道343号を陸前高田方面へ進むと、道路沿い左側にある(右側が臨時駐車場)。バスは水沢江刺駅21時35分発、水沢駅22時発の黒石寺行き臨時バスあり(黒石寺発は0時45分発が水沢駅行き、6時45分発が水沢江刺駅経由水沢駅行き)
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