更新日:2023年05月18日 16:42
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無知なネトウヨと、没落したリベラル。“右か左か”の時代は終わりだ/倉山満

保守論壇村で、ネトウヨは「テレビに真実は無い。本当のことはネットで検索すればわかる」と真顔で語る

 昔の出版界は「朝日・岩波」が王者だった。政界では自民党が常勝であるように、マスコミと出版界では朝日新聞と岩波書店が絶対の権威だった。ところが、この15年ほどは、リベラル勢力の雄である朝日岩波の凋落が著しい。岩波の『世界』と言えば日本一の雑誌と目されていたが、今やそのような名前の雑誌が存在すること自体が知られていないだろう。  代わって台頭したのが、「ウヨ」である。インターネットの普及で、右翼(保守)っぽい言論の発散の場が飛躍的に拡大した。「ネトウヨ」の誕生だ。出版不況の慢性化に伴って、ネットの世界で人気のある著者が本を出せる時代が到来した。  それは決して悪いことではないし、少しでも保守色があれば普通の出版社から本が出せない時代が去ったのは、喜ばしい。言論とは左右のイデオロギーではなく、質の高さで評価されるべきだからだ。表現の自由と健全な市場が無ければ、健全な言論は無い。  だが、あまりにも長すぎたリベラル全盛時代の反動で、「保守っぽいことを言っていれば、何をやっても許される」という文化が、出版界に定着し始め、それをネトウヨどもが支えている。一言、「日本は素晴らしい国です」「私は愛国者です」と言えば、嘘やデタラメを言おうが、何をやっても許される文化がだ。プロの水準に達していない著者の本が、世に流れることとなった。  保守の著者を招く講演会に、「日本は悪い国だと教えられてきたので、本当のことが知りたくて勉強しに来た」女性が来たとする。著者も常連の客も、大はしゃぎである。そして嬉々として、「SMAPの正体は在日韓国人」などと、相手に相槌を打たせる間もなくまくしたてる。結構な出版社から本を出している著者がこの始末である。それを支えるファンのネトウヨに至っては、既にSMAPが解散していることを知りもしない。それでいて、「テレビに真実は無い。本当のことはネットで検索すればわかる」と真顔で語る。  ついでに言うと、保守論壇村では、彼らが保守と信じる人であり続ければ、強姦・DV・痴漢・横領・ネットワークビジネス、なんでも庇ってくれる。嘘だと思うなら、保守を標榜する月刊誌の執筆者を見よ。まるでサファリパークか刑務所だ。  こうした連中を増長させているのが、長すぎた安倍内閣だ。私は今の政治に何も期待などしないが、監視しなければ、より悪くなる一方だ。  安倍内閣は憲政史上最長の内閣となった。7年も政権を独占していて何一つ実績が無いのだから、今後も安倍内閣を存続させるなど、税金の無駄遣いだ。だが、安倍内閣には守護神がいる。枝野幸男だ。  国会開会初日に立憲民主党と国民民主党の合併話が流れた。立民が無条件降伏を突きつけたからだ。「民主党同窓会」の政党で、党首が枝野幸男。人を笑い死にさせる陰謀か?  野党がこの体たらくだから、安倍首相が胡坐(あぐら)をかける。安倍首相こそが「戦後レジーム」の最大受益者ではないか。  右か左かは、終わりだ。  これからは、誰が一貫して正しい言動をしてきたかで評価される時代にすべきだ。目の肥えた読者の役割は大きい。
1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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