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最北端にある「日本一の駅そば」を食べてきた。味も店主もあったかい

―[シリーズ・駅]―
 駅弁と並ぶ、昔からの駅グルメといえば「駅そば」。旅先では旅情をかきたててくれ、仕事での移動中にはサッと食べることができる。日ごろから利用している人も多いのではないだろうか。
音威子府駅

音威子府駅

 そんな全国各地に存在する駅そばだが、日本でもっとも北にあるのが北海道の音威子府駅(おといねっぷ)にある『常盤軒』だ。

最北端の駅そばは、日本一の駅そばでもあった?

 実は、音威子府は日本のそば生産地の北限。ほかでは見ない黒っぽい麺を使った「音威子府そば」は、強い風味とコシが特徴。地元産のそばを使用した常盤軒は“日本一の駅そば”とも謳われるほどだ。  そのため、ここでそばを食べるために全国から人が訪れ、鉄道ファンの間でも必ず立ち寄るとされる名店のひとつだ。今回、常盤軒のそばを食べるために音威子府に向かったのだが、営業は午前10時半~14時のお昼のみ。  しかも、旭川と稚内の間に位置する音威子府駅は、上下線合わせて発車本数は1日14本(※2019年3月ダイヤ改正時)と少ない。東京からだと飛行機と鉄道を乗り継いでも営業時間には間に合わず、札幌や旭川などで1泊する必要がある。  だが、アクセスが不便なこともかえって人を惹きつける理由のひとつなのだろう。北海道の雪深い駅で食べる日本一の駅そばとあれば、むしろ旅の気分を盛り上げてくれる調味料でしかない。
札幌から特急『宗谷』で音威子府へ

札幌から特急『宗谷』で音威子府へ

『宗谷』

『宗谷』

 筆者は札幌駅を朝7時半に出る稚内行きの特急『宗谷』に乗り、音威子府駅へ。実は、札幌からだとこれに乗車する以外の選択肢がないからだ。
暖冬や雪不足とは無縁

暖冬や雪不足とは無縁

ところが、途中で徐々に雪が強くなり、途中からは吹雪に。その影響か定刻の10時41分より少し遅れて音威子府駅に到着。列車から一歩降りた途端、猛烈な寒さが襲ってくる。このときの気温はマイナス10度を下回っており、吹雪いているせいか体感温度はさらに低く感じた。

約9か月の休業を経て、昨春営業を再開

駅改札口

駅改札口

日本最北の駅そば屋『常盤軒』

日本最北の駅そば屋『常盤軒』

 急いで改札から駅舎に入ると、漂ってくるのはそばつゆの香り。改札口のすぐ隣に目当ての常盤軒はあった。メニューはそばのみで、「かけ」(370円)、「天ぷら」(470円)、「月見」(420円)、「天玉」(520円)の4種類のほか、お土産用のそばも。天ぷらそばを注文し、待つこと数分。念願の日本最北端の駅そばとご対面だ。
黒っぽい麺が特徴

黒っぽい麺が特徴

 写真や映像などで知っていたが、やっぱりそばが黒い。やや太めの麺は田舎そばっぽくも見えるが香りはそれともちょっと違う。風味も味も普段食べているそばに比べると強い。これこそ音威子府そばの特徴で、通常は廃棄する甘皮と呼ばれるそば殻も一緒に挽いている。色が黒っぽくなるのもそのせいだという。
ここまで来た甲斐があったと思わせてくれる味だ

ここまで来た甲斐があったと思わせてくれる味だ

 昆布とにぼしをベースにした少し甘めで濃厚なそばつゆとのバランスもよく、味も筆者好み。札幌から3時間以上もかかったが、ここまで来た甲斐があったというものだ。  ただし、常盤軒は創業1933年と80年以上の歴史があるが、ずっと日本最北端の駅そばだったわけではない。以前は稚内駅構内にある『そば処宗谷』が日本最北だったが、駅舎の新築移転で2011年に閉店。これに伴い、常盤軒が日本最北端の駅そばとなったのだ。  ところが、2018年8月以降はしばらく休業。この店は西野守さん(83歳)夫婦が切り盛りしているのだが、妻の寿美子さん(79歳)が足を骨折したことで店を閉めていたのだ。
常盤軒へのファンのメッセージ

常盤軒へのファンのメッセージ

 2人とも高齢であることから閉店する可能性も懸念されていたが、2019年4月25日に営業を再開。「わざわざ食べに来てくれるお客さんのためにも頑張りたくてね」と守さん。駅構内には全国のファンから寄せられた応援メッセージが貼られており、そうした声が復帰を後押ししてくれたと話していた。
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駅構内には鉄道グッズや写真を展示した資料室も
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『常盤軒』
営業時間:10時30分~14時
※そばがなくなり次第終了。
定休日:水曜、木曜
場所:JR音威子府駅構内(北海道中川郡音威子府村字音威子府509番地)

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