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バカラのひと勝負に140万円。20代の僕が味わった臨死体験と呪われた人生

―[負け犬の遠吠え]―
ギャンブル狂で無職。なのに、借金総額は500万円以上。 それでも働きたくない。働かずに得たカネで、借金を全部返したい……。 「マニラのカジノで破滅」したnoteで有名になったTwitter上の有名人「犬」が、夢が終わった後、短かった闘いを振り返り、喫緊の金策のアイディアを綴っていく当連載。 最終回を見届けられるのが先か、借金で破滅するのが先か……すべては犬次第だ。 犬のツイッタープロフィール=====  日々は一向に変わらず、生活は首をもたげたまま上を向かない。酒を煽っては明日を待ち、明日がくる度に返済の期日が近づいて首を締められていく。働いても間に合わない借金は、まるでサイコスリラー映画「SAW」で徐々に四肢を捻られる拷問のようだ。  東京にパチンコ屋の喧騒が少しずつ戻り始め、街にも人が現れ始めた。緊急事態宣言下の自粛要請のストレスで誰もが誰かに負の感情を向けていた数日前が嘘のように戻っていく。人の社会は前に進むために全部忘れていくんだろう。僕の借金も忘れて欲しかったが、カード会社や管理会社が通常業務に戻るにつれて電話の回数は増えている。支払いを遅らせるのも限界に近い。  月末が近づいて大きな支払いの催促が増えると 「もう今すぐ全部売っ払ってカジノで勝負してしまいたい」  という気持ちになる。日々の1万2万じゃどうにもならない金額が必要だと言われた時はいつもバカラを思い出す。僕を救い、僕を殺したゲームを。

バカラで狂った20代無職

 バカラ(Baccarat)とはカジノで最も有名で、最も多くの台が設置されていて、最も大金が賭けられるゲームの王様だ。プレイヤー(Player)とバンカー(Banker)という架空の2人が勝負をし、どちらが勝つかを予想するだけのシンプルなルール。テーブル上には、ディーラーとそれぞれのトランプ、賭け金のみが存在する。  勝率はどちらもほぼ同じで、勝てば賭け金と同じ金額が支払われる。100万円欲しかったら100万円賭けて勝てばいい。賭ける側は勝負が始まる前にベットを済ませ、一切小細工ができず、あとは賭けた側が勝負に勝つのを祈るしかできない。  人に与えられた権利は、もうすでに勝敗を決しているカードを裏返してもらい、少しずつ捲って真実を知ることだけだ。ここがバカラのキモでもある。  トランプは13の数字と4種類の柄、合計52枚が存在する。バカラにおいて4種類の柄は全く同じものとして扱われ、1~10の数字はそのまま数字通り、11~13は全て「10」として数えられる。  11~13はいわゆる「ジャック、クイーン、キング」でそれぞれ黒い縁の中に王様や女王様のイラストが描いてあり、裏返しから捲っていくとすぐに縁が見えるため、10の数字であるとわかる。  4は2×2、5はその真ん中に同じマークが1つ、6は3×2、7と8はその真ん中に1つもしくは2つ、9と10は4×2の中に1つもしくは2つのマークが印刷されている。1、2、3はカードの中央に縦に並んでいる。例えばトランプを横からゆっくり捲った時、黒いラインが引いてあれば10だし、マークがすぐに3つ見えれば6~8、見えなければ1~3だ。  バカラの勝敗はプレイヤー・バンカー共にそれぞれ2枚か3枚を引き、その合計値の下一桁で決まる。8と7を引いた場合は5だ。そして9に近い方が勝つ。どこまでもシンプルだ。  トランプのデザインをした人は天才だと思う。もちろん裏返しのカードの数字は最初から決まっているのだが、徐々に明らかになる様子を見て祈りの練度を上げていく。就活でエントリーシートが通った時よりも面接で通った時の方が拳に力が入るだろう。それと同じだ。生まれてからこれまで一度も就活をしたことはないが、そのくらいはわかる。
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失禁したトランプのめくり
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