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「コロナ自粛はやりすぎだった」大阪、英国でも第2波に備えて異論が噴出

高齢者を守るために若者を犠牲にした?

 そういった広い観点から、新型コロナの脅威にさらされているはずの高齢者までもが、声を挙げ初めています。  イギリス紙「The Telegraph 」電子版に、「Tell MPs ‘not in my name’ if you are horrified by this social experiment」(この社会実験をおぞましいと感じるなら、議会の連中に、“断固反対だ”と言ってやればいい/以下筆者訳)というコラムが掲載されていました。  著者のジャネット・デイリーはアメリカ出身のジャーナリストで、現在76歳。彼女は、新型コロナへの恐れは集団ヒステリーだと言い切っています。なぜなら、第二次世界大戦と比較して、物資が欠乏しているわけでもなく、またそうした緊張状態が長期間続くわけでもないことは明白なのに、根拠のない不安に人類が屈してしまう、不可解な混乱を生み出していると考えるからです。
 London

2メートル開けることを促すロンドンの郵便局(今年4月)(C)Lorna Roberts

 これに乗じて、ロックダウンや経済活動の停止が行われることによる損失を、デイリー氏は危惧します。 <一体全体、何の目的があって私たち高齢者を守ろうとしたのかわからないが、そのために費やされたコストのせいで、孫の世代がこの先ずっと損をし続けると思うと、心の底からぞっとする。>  そして、デイリー氏は、専門家が主張するソーシャルディスタンスの徹底にも疑問を呈しています。それは、彼ら自体の不明瞭な言動のせいだとして、こう切って捨てるのです。  <最初、ワクチンができるまでの間、じっとしていてくださいと言われた。すると、今度は何の説明も謝罪もなく、ワクチンはできないかもしれないなどと吹き込まれていたのだ。>  デイリー氏は、他ならぬ専門家ですら混乱に陥っていたなかで決定されたロックダウンに、なんの科学的根拠があったのか、と言っているわけですね。  もちろん、これをもってして都市封鎖や移動制限にまったく効果がなかったと早急に結論づけるわけにもいきません。前述の大阪府の会議で座長を務めた朝野和則・大阪大大学院教授(感染抑制学)の、「クラスターを作らせないという意味で休業は有効ではないか」という発言に見られる考えに、国民が一定の理解を示してきたからこそ、自主的な自粛が成立したのですから。  ただし、同時に科学が万能ではないことも受け入れなければならないでしょう。いかに科学的見地から正しく安全と判断された行動を積み重ねたとしても、この世からウイルスが消え去ることはありません。事実、日本よりも厳しいロックダウンを課したアメリカで、自宅に3週間こもりつづけたにもかかわらず、感染してしまった女性の例もありました。  それでも、まだ私たちは科学のみをよすがにして耐え忍ぶべきなのでしょうか?
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海外にも自粛警察。密告社会に
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音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4

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