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宗教二世でお嬢様学校卒。異色経歴のラッパー・Marukido本人を直撃

崇拝する教祖への「罵詈雑言」

「匿名掲示板で自分の教祖と宗教が、いろんな人にバカにされて、叩かれているのを見てびっくりしました。インターネットがなかったら、一生聞くことがなかったかもしれないような、教祖への罵詈雑言を見て、私は最初教祖を擁護するような書き込みをしました。掲示板の人達はなぜ、こんな嘘をつくんだろうと純粋に思っていた。  でもインターネットに慣れてきた私は、教祖のこと以外に受験のことや、友人が運営していたポケットモンスターの攻略板も見るようになっていて、そこでは誰も嘘をついたりしているようには見えなくて、ただ情報交換をしているように見えた。そこで初めて、自分の宗教への不信感が生まれました。 Marukido その頃私はそれなりに壮絶ないじめにあっていて、学校ではうさぎの糞を食べさせられたりもしました。そのことを両親に相談しても“もっとたくさんお祈りしなくちゃね”としか言われず、何も解決しない。どんどん不信感が募っていって、両親に私はもう宗教を信仰しないので、除名してもらうようにと頼んで、お祈りにいかなくなりました」  除名についてはまだ幼かったため、両親に頼んだだけだったという。本当に除名してもらえているのかは分からないが、もう近づきたくないから、自分でも確認にいけていない、と語った。

「信仰は強要されるべきものではない」

 壮絶な幼少期からお嬢様学校への進学後、海外の大学を中退しているという。その後は起業活動などを経て、2019年からラッパーとして活動している。また、宗教二世という生きづらさを抱えて育ったにもかかわらず彼女の語り口は非常に柔らかく丁寧で、また頭の良さを感じさせられる。 「問題作なんて言われるけど、少女援交も宗教二世も、あまりにも自分の身近にあった問題だったんです。ラップで自己表現しようと思ったのは、周りの後押しのおかげで、たまたまだった。始めたのが遅かったので、とにかく目に止めてもらわないと、と思って、デビュー作は友人のAV女優たちを誘っての過激なMVを撮りました」
Marukido

壮絶体験も含め、終始笑顔で語ってくれた

 中高時代の友人にはセクシー女優として活躍している子が数人いて、Marukido氏自身ヌードを撮影することに抵抗はなかったという。 「あらゆるものについて、あまり抵抗や偏見がないですね。これは、宗教が教えてくれた大切な教えの一つだったと思います。根底は“すべての人に優しく”、あらゆるものを受け入れようという教えでした。それは今でも自分の根本に根付いているし、優しさを教えてくれた宗教に感謝もしています。宗教を否定するつもりは全く無くて、ただ二世として両親や他の誰かに信仰を強要されることはおかしいと思っただけ」 『Lil 宗教 Jr. 』をリリースしたことで、長い間絶縁状態だった両親とも連絡を取ることができたという。 「表現方法は色々あるけど、音楽という道を選択してよかった。音楽は受け取り方を強制しないんです。両親は『Lil 宗教 Jr. 』を聞いて、自分たちの信仰する宗教とは違う宗教の曲を作ったことを、私の思惑とは違う方向で逆に良しとしてくれたようでした。それぞれにとって都合よく解釈してくれればそれでいい」  宗教二世として育った小学校時代。続く中高時代も、東京ではある意味当たり前な、ある問題と共に生きたというMarukido氏。次回は『合法JK』が生まれるきっかけとなった、Marukido氏が当時渦中にいた少女援交の話についても掘り下げる。<取材・文/ミクニシオリ 撮影/鈴木大喜>
1992年生まれ・フリーライター。ファッション誌編集に携ったのち、2017年からライター・編集として独立。週刊誌やWEBメディアに恋愛考察記事を寄稿しながら、一般人取材も多く行うノンフィクションライター。ナイトワークや貧困に関する取材も多く行っている。自身のSNSでは恋愛・性愛に関するカウンセリングも行う。
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