更新日:2020年11月18日 12:36
エンタメ

「ハルシオン・デイズ」タイトルの意味と、作中のメタファー/鴻上尚史

ロンドンで上演

 ロンドンで2011年に、この芝居をリバー・サイド・スタジオというインディーズでは有名な劇場で上演しました。  その時に、「ハルシオン」の話をしたのですが、イギリス人俳優はキョトンとした反応でした。  まさかと思って調べてみたら、アメリカや日本では有名でも、イギリスでは売っていませんでした。  芝居は、「眠れない夜に押しつぶされない方法は三つ。月を見上げる。ハルシオンを飲む。パソコンを立ち上げる」という言葉と共に始まるのですが、「ハルシオン」を知らないなら、話が通じないじゃないかと焦りました。  すぐに、「睡眠導入剤ハルシオンを飲む」とセリフを変えましたが、そもそも、ロンドンでは、このタイトルにすべきじゃなかったのではと少し後悔しました。

目を凝らすことで見える、じつは存在しているもの

 作品の中には、「地球照(ちきゅうしょう)」という現象が出てきます。  知ってますか?  三日月をじっと見ると、他の暗い部分も、薄く光って見えることがあるのです。  三日月だけじゃなくて、他の部分も薄く光って、月全体が丸く見えるという現象です。  三日月は、太陽の光を反射して輝きます。  が、じつは、薄く光っている部分は、地球の光を反射して輝いているのです。  地球に照らされているので、「地球照」と呼ばれています。  観察力の鋭い人は、子供の頃に気付いたとか、知っていたと言います。  この現象を知った時、なんだか、ものすごく素敵だなと思いました。  目に見えるものだけじゃなくて、目を凝らしたら見えるものがある、なかなか気付かれなくても、じつはちゃんと存在しているものがある。それが「地球照」で、これはいろんなことのメタファーになると感じたのです。  そんなわけで、毎日、公演を続けています。  東京は11月23日までです。ネットで「サードステージ」を検索していただければ、チケットの買い方、出てます。  よろしければ、劇場でお会いしましょう。
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