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悔しさはなぜバネになるのか? 佐藤琢磨に学ぶ心の動きとは

いまの仕事楽しい?……ビジネスだけで成功しても不満が残る。自己啓発を延々と学ぶだけでは現実が変わらない。自分も満足して他人にも喜ばれる仕事をつくる「魂が燃えるメモ」とは何か? そのヒントをつづる連載第237回
F1

※写真はイメージです

 2020年、レーサーの佐藤琢磨がインディ500で2度目の優勝を果たしました。インディ500はF1モナコGP、ルマン24時間レースに並ぶ世界三大レースの一つで、100年を超える歴史があります。その長い歴史においても複数回優勝した者は20人しかおらず、日本でも話題になりました。  佐藤琢磨は2002年から2008年にかけてF1に参戦していました。2003年にはアメリカGPで3位入賞を果たすものの、2008年のスペインGPを最後にF1から離れ、2010年からインディカー・シリーズに参戦。最初のインディ500優勝は2017年です。  このとき所属していたのは、有力チームのアンドレッティ・オートスポーツでした。それに対して2020年所属していたのはレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングです。そしてこのレイホールと佐藤琢磨には2012年から続く因縁があります。  佐藤琢磨は2012年にもレイホールに所属していました。この年のインディ500のファイナルラップで、首位のフランキッティを抜こうとしたところ、マシンがスピンしてクラッシュ。17位でレースを終えています。つまり、レイホールでの優勝は雪辱戦だったということです。

悔しさがバネになる理由

 何かを成し遂げたり、習慣や性格を変えたりするには信念が必要です。そして、信念は「テーマ」「エピソード」「フレーズ」の3つで出来ています。 <信念の3要素> 1.テーマ(取り組むべき課題) 2.エピソード(心を揺さぶられた体験) 3.フレーズ(体験について考えたこと)  彼の場合、テーマになっているのは「悔しさ」です。2012年のインディ500終了後、彼は「悔しいです。悔しさマックスです」とコメントしています。また雑誌『オートスポーツ』のインタビューで、「レイホールでついに勝った、インディ500を」と水を向けられると、「もう、そのためだけに走っていましたから。8年かかりましたけど(笑)」と答えています。  レイホールでインディ500を勝つ。それが彼にとって、信念になっていたのは明らかです。このように人間は自分の体験を振り返り、自分なりに考えたことが、自分の信念になります。 「悔しさ」はビジネスやスポーツで欠かせないテーマの一つです。人よりも優れた結果を出した時、「何が何でも一番になってやる」「何が何でも追い越してやる」と悔しさがガソリンなっていることは珍しくありません。

ヒカキンも悔しかった

 たとえば、YouTuberのヒカキンはYouTubeの開催した動画コンテンストで、最終選考で落選しています。この時、彼は「人生で一番悔しかった」「入賞した人に負けないクリエイターになってみせる」と考えました。その後、彼は実際に誰もが知るクリエイターになっています。  佐藤琢磨とヒカキンの悔しさには「僅差」という共通点があります。人間は「あともうちょっとだったのに」という僅差で負けた時にこそ、猛烈な悔しさを感じます。もし佐藤琢磨がファイナルラップで首位争いではなく最下位争いだったら、ヒカキンが最終選考ではなく一次選考落ちだったら、「自分はまだまだだ」と納得していたはずです。  人間は「頑張ればうまくいく」という根性論でも、「こうすればうまくいく」という方法論でもうまくいきません。なぜならどんなに準備や工夫も重ねても、「うまくいかない期間」がチャレンジにはやってくるからです。そして、その期間を乗り越えるのに必要なのが、「だから自分はこれをやるんだ」という信念論です。  佐藤琢磨は2012年にレイホールで挑んだインディ500で敗れているからこそ、2020年にレイホールで再び挑んだインディ500で勝ち抜くための信念を養えています。勝負をすれば、勝ちにこだわるのが人の心です。しかし敗北を経験しているからこそ、人は勝利への信念を養うことができるのです。  信念を持つには、自分が決めたテーマについて、日頃から情報を集める必要があります。また、ただ信念を持つだけでなく、それを誰かに話して、自覚を高めることも大切です。信念の3要素に、このヒントとアウトプットを加えた5ステップを私は「マインドレコーディング」と読んでいます。 〈マインドレコーディングの5ステップ〉 1.テーマを決める 2.ヒントを集める 3.エピソードを振り返る 4.フレーズを作る 5.アウトプットで確かめる
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