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皇位継承を論じる際には、歴史に学ぶ姿勢が何よりも重要である/倉山満

皇位継承を論じる際には、歴史に学ぶ姿勢が何よりも重要である

 親王が多かったにもかかわらず数代先には継承者不在となった例は江戸時代にもあったが、その時は閑院宮家から光格天皇が即位し、皇統断絶の危機を防いだ。なお、閑院宮家創設は、光格天皇即位の71年前である。時の為政者だった新井白石が皇統断絶の危機に備え、宮家を創設していたので危機を免れた。皇位継承を論じる際には、歴史に学ぶ姿勢が何よりも重要である。  皇室において最も重要な原則がある。先例、男系、直系である。この順番を間違えてはならない。皇室とは先例によって出来上がっている世界なのだ。  先例を顧みる必要が無いとしよう。「選挙天皇制」「公募天皇制」「外国人天皇制」などなど、何をやっても良くなる。先例を軽視無視して皇室を語る論者が多いが、その人たちは「誰もそこまで言っていない」とでも言うのだろうか。そこまで言っていないなら、どこまでの先例ならば守るのか。  皇室は、2681年の歴史を積み重ねてきた。晴れの日も雨の日もあった。常に歴史に学び、悪例を避け、嘉例に倣う。どの先例に学ぶのかの議論を重ねて、これまで日本は続いてきたのだ。  最も重要な先例は皇位の男系継承である。どの男系に直系が継承されていくのかが、皇室の歴史である。  では、最も大事な原則である男系継承とは何か。初代神武天皇の伝説以来、すべての天皇は父方の先祖が天皇である。つまり、男系継承とは皇室を皇室たらしめる最も重要な原理なのだ。  最も血縁が遠い皇位継承は、第25代武烈天皇から第26代継体天皇の先例だ。武烈天皇と継体天皇は第15代応神天皇を共通の祖とする。応神天皇は、二人の高祖父の父である。日本語には「高祖父の父」に当たる言葉はない。「父の父の父の父の父」である。これほど血縁が遠いにも関わらず、男系継承は守られた。西暦507年の出来事と伝わる。1500年前には、男系継承は絶対との伝統が確立していたのだ。  継体天皇の先例は重要で、「五世の孫」は皇籍を離れることとなる。例外はあるが、皇位を継承する直系に属さない皇族は、五世以内に皇室から離れて臣下(民間人)となるのが原則だ。  多くの外国では、血縁さえつながっていれば、未来永劫、王室に残れる。それが争いのもとになってきた。我が国でも、歴史の教訓に学び「五世の孫」の原則が確立されてきた。  たとえば、応仁の乱の当事者を挙げておこう。足利・細川・斯波・畠山・山名・一色・赤松・京極・大内の苗字を持つ者の中で、「百済の聖明王の子孫」を自称した大内氏以外の全員が、天皇の由緒正しき男系子孫である。この人たち全員に皇位継承の資格を認めたらどうなるか。応仁の乱どころではない大混乱で、皇室などとっくに滅んでいただろう。今は皇族が少なすぎるのでわかりにくいが、多すぎても皇位継承は安定しないのだ。
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男系継承は女性差別ではない
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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