内部被曝には味噌汁がいい!?
原発事故で、大量の放射性物質がばらまかれた。気をつけても、知らず知らずのうちに体内に取り込んでしまう。そんな“1億総被曝時代”を生きるには、どんな食生活を送ればよいのだろうか?
◆熟成味噌が被曝から人体を守ってくれる!?
爆心地から1.8kmの長崎の病院で被爆しながら同僚医師、職員、入院患者に「玄米飯に塩をつけて握るんだ。辛くて濃い味噌汁を毎食食べるんだ。砂糖は絶対にいかんぞ」と栄養療法を徹底指導してワカメの味噌汁などを飲ませ、原爆症から全員を救った秋月辰一郎医師の「奇跡の食事」の逸話は有名だ。
この噂を聞いて、チェルノブイリ原発事故の際は、ヨーロッパに大量に輸出されたという日本の伝統食・味噌。本当に、放射線防御に有効な食材なのだろうか?
広島大学原爆放射能医学研究所の渡邊敦光名誉教授(放射線生物学)らのグループは「発酵食品による放射線防御作用について」の研究を’90年から行っている。
同グループでは、マウスを4つのグループに分け、それぞれ味噌、しょう油、食塩を混ぜた餌と普通の餌を1週間与え、エックス線を照射して影響を調査。その結果、味噌の餌を与えたマウスは、ほかのマウスより細胞組織の損傷を抑制でき、細胞の再生も盛んに見られたという。また、熟成期間の長い味噌ほど再生スピードが速かったことが判明。渡邊教授は「味噌の熟成段階で生まれる『メラノイジン』という物質に放射線防御効果があるのではないか」と推察する。しょう油の餌を与えたマウスにも同様の効果が見られた。
また、マウスに直接アイソトープ(放射性同位元素)のヨウ素131とセシウム134を投与したところ、あらかじめ味噌を食べていたマウスは普通の餌を食べていたマウスよりもヨウ素を多く排泄。がんの発生率も大幅に低下した。
渡邊教授は「照射直後に味噌を与えても、放射線防御効果はなかった。日ごろからの継続的な摂取が大切ということです。マウスの実験結果がすべて人間に当てはまるとは限らないし、『味噌汁を飲んでいれば安全』と言うつもりはありませんが、できれば一日2杯は飲んでほしい」と強調している。 <取材・文・撮影/田中裕司 北村土龍>
― 内部被爆に負けないカラダのつくり方【5】 ―
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