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コロナ禍以前の生活を、どれほど覚えているか?/倉山満

もはや忘却の彼方の人物もいるのではないか

 私人では、7人。岩田健太郎神戸大学教授、ダイヤモンド・プリンセス号に乗り込むなど話題の人物だった。尾﨑治夫東京医師会会長、日本医師会会長がコロナ禍のさなかに選挙を行い会長が交代したが、一貫して枢要な地位にある。フェイスブックを中心に積極的な発信を行っている。尾身茂新型コロナウイルス対策分科会会長、「総理大臣の隣にいる人」である。児玉龍彦東京大学教授、一時期は「気のゆるみ」に強く警鐘をならし話題となった人物だ。西浦博北海道大学教授(後に京都大学教授)、「何もしないと42万人が死ぬ」「人の流れの8割を抑制せよ」などの発言で有名だった。脇田隆字国立感染症研究所所長、感染症に関する日本最大の研究所の所長であり、政府の重要なアドバイザーだ。上久保靖彦京都大学教授、「日本人は既に集団免疫を獲得している」と唱えたので、あえて取り入れた。  この7人、大半は当然の人選だろうが、もはや忘却の彼方の人物もいるのではないか。たとえば、岩田健太郎教授がどの時期にどのような言論を行ってきたのか、正確に追っている人などおるまいし、「ダイヤモンド・プリンセス号乗り込み事件」も、今や人々の記憶から消えた。

西浦教授の計算式が残っているのはニコニコ動画だけ

 この中で最も重要な人物が西浦博教授であるのに、異論はあるまい。西浦教授が独自の計算式で「何もしないと42万人が死ぬ」と主張して緊急事態宣言が行われた。では、その計算式はどこに残っているのか。  ニコニコ動画だけなのである。つまり私文書の形でしか残っていない。紙でなくても、動画も文書なのだが、このような重要な文書が私文書でしかなく、しかもいつか消えてしまうかもしれない。  そこで、私は政策の意思決定に影響を与えた私文書を公文書として保存しようと考えた。ツイッターやフェイスブックをスクショし、動画をダウンロードする、ただ単調な作業を行うボランティアを募った。この地道な作業に応じてくれたのは、倉山塾東京支部とキャリアコンサルティングしがく総研の有志で、いずれも私の教え子たちである。  私が選定した11人の要人がインターネット上に残した私文書は整理保存され、さる6月28日に内閣官房に提出した。公文書として残ることとなる。  アーカイブ(公文書管理)を政策の検証に役立ててほしいものだ。
1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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