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大企業の「法人税調査」の実態。東芝の不適切会計問題の場合は?

「不適切会計」が問題になっている東芝の連結売上高は約6兆円。同社の第三者委員会が行った調査期間は、たったの数か月。はたして、まともな調査ができたのだろうか。元国税実査官で大企業の調査経験もあり、『国税局資料調査課』の著書・佐藤弘幸さんに話を聞いた。

法人税調査の実態「東芝クラスの大企業になると、東京国税局・調査第一部・特別国税調査官が調査担当セクションになるでしょう。特別国税調査官室は『大部屋』などと呼ばれ、特別国税調査官(指定官職)を筆頭に、総括主査1名、主査2名、調査官2名ほどで調査チームが構成されます。特別国税調査官は現場に出ることは少ないので、通常は総括主査以下、4~5名で調査を実施します」(佐藤弘幸さん)

 調査期間は7~12月の半年間にも及ぶという。

「この期間、常駐で行います。専用の調査部屋のほか、入室用のIDカード、PC、ロッカーなどが用意されます。半年も調査するのだから、深度があり、かつ全社的に調査できるだろう、と思うのは早計。1兆円企業というのは、大企業を数十社集めたような規模なのです。したがって、調査のターゲットとなるのは、数ある事業部のなかのほんの一部の事業部門だけ。それでも、調査するには半年では足りないくらいなのです」

 佐藤さんも調査第一部特官室の調査事案に従事したことがあるという。

「以前、調査第二部の売上数千億という会社の調査をしたことがあります。調査第一部の調査は、規模、調査方法、調査スキル、すべてにおいて最高のノウハウが要求される。『これが本当の法人税の調査なんだ』と国税マンとして強烈なカルチャーショックを受けたのを鮮明に覚えています」

 調査の流れは、まず数か月前に調査予告を行う。そして、調査対象の事業部を指定して、会社側と入念に打合せをする。これだけで2~3日を要するという。

「実地調査では、概況説明を受けた後、誰にインタビューするか、会社側の担当者を指名して時間割に書き込んでいきます。私の経験では、本丸(インタビューしたい本人)に届くまでに2週間を費やし、名刺交換だけで40人以上。2週間、椅子に座って面接の繰り返しです。1兆円企業の調査というのは、財務部の人だけではわからないし、事業部の人だけでもわからない。もちろん、当局だけでもわかるものではないんです。とにかく大きすぎる。というわけで、第三者委員会はたったの2か月の調査期間で世間や市場に速やかに何らかの答えを出さなければいけない立場だったわけですが、『そんなの無理でしょ』と気の毒にさえ思います」

 東芝は2015年3月期連結決算の発表が大幅に遅れているが、1000億円を超える損失を計上すると8月11日に報道された。第三者委員会が示した粉飾額は1518億円だったが、今後、最終的にいくらの額になるのかには注視したい。

【元国税実査官・佐藤弘幸】
国税局資料調査課1967年生まれ。東京国税局課税第一部課税総括課、電子商取引専門調査チーム(現在の統括国税実査官)、統括国税実査官(情報担当)、課税第二部資料調査第二課、同部第三課に勤務。主として大口、悪質、困難、海外、宗教、電子商取引事案の税務調査を担当。退官までの4年間は、大型不正事案の企画・立案に従事した。2011年、東京国税局主査で退官。現在、税理士。いわゆる“マルサ”は国税局査察部のことであるが、“コメ”は国税局資料調査課のことで、「料」の字の偏からとった隠語。一般に課税調査などを行う国税局員は「調査官」と呼ぶが、資料調査課は「実査官」と呼ぶ。<取材・文/日刊SPA!取材班 Photo by Kohei Fujii>

国税局資料調査課

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