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私はなぜ自民党甘利氏と立民江田氏の落選運動を始めたのか?<弁護士・元東京地検特捜部検事 郷原信郎氏>

広告代理店から拒絶された新聞折込

―― 具体的にどのような運動を行ったのですか。 郷原 :私は普段からブログやYouTubeでの発信を行っているので、これらを最大限に活用しました。しかし、ネットの場合は全国からアクセスがあるものの、特定の選挙区の有権者に対する訴求力という面では限界があります。そこで、両氏への落選運動に関する主張を書いた「夕刊紙」風チラシを作成してネットにアップし、各選挙区の有権者に見てもらうよう、呼びかけました。  問題は、どうやってこのチラシを各選挙区の有権者に拡散していくかでした。幸い、私の落選運動の趣旨に賛同し、個人の意思で選挙区内にチラシをポスティングしたいと申し出てくれた人たちが多数いました。そうした人には私の事務所でチラシを印刷し、お渡ししました。  チラシ拡散のために新聞折込を行うことも考えましたが、多くの広告代理店から拒絶されました。一社だけ引き受けてくれそうなところがありましたが、今度は新聞販売店から拒否されました。日本では落選運動はまだまだ認知されていないので、怪文書や誹謗中傷文書と勘違いし、関わりたくないと思ったのでしょう。  そこで、便利屋に依頼してポスティングすることにしました。チラシの印刷は印刷業者に発注しようと思ったのですが、選挙の関係で印刷業務が立て込んでいるらしく、納期が投票日後になると言われたので、やむなく私の事務所のコピー機を利用しました。まるまる3日間、深夜までプリントアウトを続け、必要部数を印刷しました。  また、チラシ拡散のためにインターネット広告も利用しました。甘利氏と江田氏の選挙区である神奈川13区と8区の地域限定で、フェイスブックに広告を出しました。  さらに、選挙区の有権者に直接訴えかけるため、選挙最終日の10月30日に、私自ら街頭演説を行いました。公職選挙法では、選挙期間中は、政党の政治活動と、無所属候補者らを支持する確認団体の政治活動以外は、団体としての政治活動が禁止されています。そのため、選挙カーの壇上から演説したり、多数の支援者たちが横断幕やノボリを掲げ、ビラを配ったりするような団体による活動はできません。  そこで、「江田氏(甘利氏)落選運動」と書いたタスキをかけ、自立式のノボリ立てを準備し、そこに「江田氏(甘利氏)を当選させてはならない」と書き、脚立の上に乗って街頭演説を行いました。あくまで個人として行うという制約を踏まえ、このような形をとりました。  私は選挙の街頭演説は初めての経験でした。最初は少し戸惑いましたが、演説を重ねるにつれ、次第に足を止めてくれる人も増え、こちらのモチベーションも高まっていきました。それぞれの選挙結果に少なからず寄与できたのではないかと思います。

いつでも甘利氏との討論に応じる

―― 甘利氏は開票中の取材で、「全国から落選運動を強烈にやられた」「党の法曹団からもこれは極めて問題があるという話が出ています」と述べていました。これは郷原さんの落選運動のことを指していると思われます。 郷原 :私は公職選挙法に則って落選運動を行いました。問題があると言うなら、具体的に指摘してほしいですね。  法的に見ると、落選運動のポイントは二つあります。一つは、事実をありのままに伝え、正しく問題を指摘することです。当選を得させない目的で候補者に関する虚偽の事実を公表したり、事実を歪めて公表すれば、罰則に触れることになります。もう一つは、落選運動者の氏名とメールアドレスを明記することです。責任の所在を明らかにし、相手がいつでも反論できるようにすることで、適正さを担保しているわけです。  これらの点について、私の落選運動に批判されるようなところはありません。配布したチラシは選挙区の有権者たちの目を引くように、見出しや色使いをある程度ドギツイものにしましたが、内容は私がこれまで相応の根拠に基づいてブログやYouTubeで発信してきたことであり、誹謗中傷などではありません。チラシには私の氏名を明示していますし、メールアドレスとホームページアドレスも記載しています。甘利氏がこのチラシの内容に異論があるなら、選挙期間中に私に文句を言ってくればよかったはずです。なぜ選挙が終わってから批判するのか、理解に苦しみます。  選挙最終日には私は甘利氏の選挙区である海老名駅で落選運動を行いました。街頭演説を終えたあと、甘利氏が最後の訴えをするために海老名駅にやってくるという情報が入ってきました。実際、私が演説しているときから、甘利氏陣営と思われる人たちがこちらの様子をうかがっていました。そこで、海老名駅に残り、甘利氏の演説を聞いていくことにしました。  甘利氏が演説している最中、私は甘利氏の目の前に立っていました。向こうも私の存在に気づいたはずです。文句があるなら、その場でも言えたはずです。  いまからでもいいので、甘利氏が私の落選運動に問題があると思うのなら、問題を直接指摘してもらいたいと思います。そうすれば、私がどういう考えから甘利氏を批判しているのか、きちんと説明します。討論にはいつでも応じます。
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落選運動のための法改正を
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げっかんにっぽん●Twitter ID=@GekkanNippon。「日本の自立と再生を目指す、闘う言論誌」を標榜する保守系オピニオン誌。「左右」という偏狭な枠組みに囚われない硬派な論調とスタンスで知られる。

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月刊日本2021年12月号

【特集1】岸田政権よ、どこへ行く
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