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私はなぜ自民党甘利氏と立民江田氏の落選運動を始めたのか?<弁護士・元東京地検特捜部検事 郷原信郎氏>

落選運動のための法改正を

―― 郷原さんの落選運動を見て、これから落選運動をする人たちがたくさん出てくるのではないでしょうか。 郷原 :ツイッターでも、私のアカウント宛てに「自分も落選運動をやりたいので、やり方を教えてくれませんか」というツイートが来ます。今回の運動を通じてノウハウが蓄積できたので、世の中に伝えていきたいと思っています。  ただ率直に言って、何から何まで一人で行うことは非常に大変です。私の場合は、甘利氏のあっせん利得疑惑が報じられたときから一貫してこの問題を批判してきたので、それに基づいてチラシを作ることができました。しかし、そのようなバックボーンがない人がいきなりチラシを作ろうと思っても、怪文書と区別がつきにくいものになってしまう恐れがあります。  また、落選運動を行う際には公職選挙法をしっかり理解する必要があります。私はたまたま弁護士として法律に関わる仕事をしていますが、普段から法律に関わっていない人の場合は、なかなか難しいところがあると思います。  効果的な落選運動を行うには、やはり個人ではなく団体の力が必要です。公職選挙法は選挙期間中は団体として政治活動を行うことを禁じているので、この点がネックになるのですが、選挙期間前であれば団体として活動しても問題ありません。  そこで一つの方法として考えられるのが、選挙期間前に、団体で誰に対して落選運動を行うかを協議し、そのためのコンテンツを作ることです。選挙が始まる前でも、間違いなく立候補するであろう政治家はわかりますから、その人を対象とする落選運動のコンテンツを準備すればいいのです。そして、選挙期間に入ったあとは個人ベースで落選運動を行えば、公職選挙法に抵触することはありません。  私としては、選挙期間中であっても落選運動を、団体の活動としても行えるように法改正することも検討する必要があると考えています。政党や無所属候補者らを支持する確認団体は選挙期間中でも政治活動ができるのだから、たとえば届け出をした確認団体による落選運動については、一定の範囲で認めることがあってもいいと思います。これは今後の課題とすべきでしょう。 (11月1日 聞き手・構成 中村友哉) <初出:月刊日本12月号> ごうはらのぶお●’55年生まれ。東京大学理学部卒業後、民間会社を経て、1983年検事任官。東京地検、長崎地検次席検事、法務総合研究所総括研究官等を経て、2006年退官。「法令遵守」からの脱却、「社会的要請への適応」としてのコンプライアンスの視点から、様々な分野の問題に斬り込む
げっかんにっぽん●Twitter ID=@GekkanNippon。「日本の自立と再生を目指す、闘う言論誌」を標榜する保守系オピニオン誌。「左右」という偏狭な枠組みに囚われない硬派な論調とスタンスで知られる。
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月刊日本2021年12月号

【特集1】岸田政権よ、どこへ行く
【特集2】バラマキは財政破綻を招くのか


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