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私はなぜ自民党甘利氏と立民江田氏の落選運動を始めたのか?<弁護士・元東京地検特捜部検事 郷原信郎氏>

―[月刊日本]―

落選運動を始めた理由

選挙運動

写真はイメージです

―― 郷原さんは今回の衆院選で自民党の甘利明氏と立憲民主党の江田憲司氏に対する落選運動を行いました。なぜ彼らの落選運動をしようと思ったのですか。 郷原 甘利氏については、2016年に『週刊文春』の報道によってあっせん利得疑惑が発覚したとき以降、私はこの問題を一貫して批判してきました。その延長線上に今回の落選運動があります。  当時の経緯を振り返ると、甘利氏は経済再生担当大臣を務めていたとき、URへの口利きの見返りとして大臣室で現金を授受したと報じられ、辞任に追い込まれました。甘利氏は辞任会見で現金授受を認め、特捜OBの弁護士に調査させているので、時期が来たら説明すると言っていましたが、睡眠障害を理由に国会を半年近く欠席し続け、検察の不起訴が決まると、弁護士の調査結果を公表することもなく、何食わぬ顔で活動を再開し、岸田内閣の誕生にあたって自民党幹事長に就任しました。  甘利氏は幹事長就任会見でこの問題について問われると、説明責任は果たし終えたと言い放ちました。その根拠としてあげたのは、検察が不起訴処分にしたことでした。甘利氏は弁護士の調査結果は検察の判断と同様だったとも言っていました。  しかし、検察の不起訴処分とは、公訴権を独占する検察官が、収集した証拠に基づき有罪判決が確実に得られるかどうかを検討した結果、その権限の行使には至らなかったということにすぎません。政治家あるいは当該政治家の事務所の行為について、犯罪や違法行為がなかったという「潔白」を意味するわけではありません。  甘利氏が強調する特捜OB弁護士の調査も、弁護士の名前も明らかにされておらず、報告書も公開されていないので、全く説明したことにはなりません。そもそも弁護士が調査したかどうかも疑問です。  他方、江田氏に対する落選運動は、8月に行われた横浜市長選挙がきっかけです。江田氏は多くの反対を押し切って山中竹春氏を擁立しましたが、これは民主的手続きや議論を無視した強権的手法でした。  また、山中氏に関して市長としての適格性を疑わせるような問題が次々と発覚しましたが、江田氏は有権者たちに対してきちんとした説明責任を果たそうとしませんでした。結果的に山中氏は選挙に勝利しましたが、市長就任後、疑惑について説明不能の状態に陥っており、また、横浜市議会では多くの問題について議論が成り立たない異常な状況にあります。  横浜市政を惨憺たる事態に陥らせた責任は、独断で山中氏を擁立し、説明責任を無視した江田氏にあります。しかし、江田氏はそれを反省するどころか、横浜市長選での野党共闘を今後の選挙のスタンダードにすべき成功事例であるかのように言っていました。それゆえ、健全な民主主義を実現するためにも、江田氏を落選させる必要があると考えたのです。

幹事長人事は自民党だけの問題ではない

―― 落選運動は日本では珍しいものだと思います。落選運動の意義はどこにあるのでしょうか。 郷原 :日本の公職選挙は基本的に政党中心で、有権者の大部分はその候補者がどの政党から公認や推薦をもらっているかに注目しながら投票しています。国政選挙では各政党の当選者数という「数の比較」が重視されるので、有権者の姿勢としては、政党とその政策に注目して選択することにならざるを得ないと思います。  しかし、政党を選択するよりも、候補者たる政治家そのものに焦点をあてなければならない場合もあります。それは、その政治家が政党の中で大きな権限を持ち、国政全体に影響を与えうるようなポストについているときです。  政治の世界は大なり小なり不透明なところがあり、政党内部ではしばしば猿山のボス争いのようなことが起こっています。その結果として、信頼に値しない人物が重要ポストにつくことも珍しくありません。これはその政党の関係者だけでなく、一般の有権者にとっても重大な問題です。  今回の「甘利氏の説明責任」の問題に関して、「政党内の人事について外部から批判される筋合いはない」といった声もありますが、論外です。甘利氏がついた自民党幹事長というポストは、国民の税金を原資とする政党助成金を含む自民党の政治資金を配分する権限を握っています。政党助成金の額は自民党の場合は170億円にも及びます。そのため、自民党幹事長にどういう人物がつくかは、自民党関係者だけの問題とは言えないのです。  しかし、自民党幹事長は民主的なプロセスを経て選出されるのではなく、自民党総裁の指名だけで決定されます。そのため、幹事長人事について、有権者が直接影響を与えることはできません。甘利氏のように問題の多い人物が幹事長に抜擢されたとしても、そのような任命自体を食い止める方法はないのです。  江田氏についても同様です。江田氏は立憲民主党代表代行として党運営や選挙対応を差配していますが、そこに有権者が介入することはできません。  有権者が彼らに対してNO! を突きつける機会があるとすれば、その政治家が立候補する選挙だけです。ここに落選運動の意義があります。落選運動によって重要ポストにつく政治家が落選したり、得票率が下がれば、当該政治家が重要ポストに就任することが否定されたことを意味します。甘利氏は小選挙区で落選し、江田氏は当選したものの、共産党の候補者が立候補しなかったのに、前回の選挙と比べて得票率を落としました。これらの選挙結果を考えると、それぞれの選挙区の民意は明らかだと思います。
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【特集1】岸田政権よ、どこへ行く
【特集2】バラマキは財政破綻を招くのか


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