ウクライナ避難民8人が日本に。一方で“難民”を収容所にブチ込んでいる実態をどうするのか
――日本から他国へ出国することに成功したケースもあると聞きました。
トーマス:確かにそういう人もいますが、かなりレアケースです。昨年、教会に来ていた方がカナダへ出国したケースもありました。ただ、多くの団体のネットワークが必要でしたし、また何年もかかったと聞いています。大変困難な道のりで、そう簡単にできることではありません。
――なぜ、難民認定率が低いにもかかわらず、難民申請を求めて日本に来る人がいるのでしょうか。
トーマス:日本を選んできた、という人は少ないと思います。たまたま自国で日本滞在のためのビザが取れたからというケースが多いです。例えば、ワールドカップやオリンピックなどがあると、関係者のビザで日本に来ることができます。また、自分がいた場所の近くに日本大使館があったから、という人もいます。
それから、日本にはクルド人難民がたくさんいますが、それはトルコと日本とはビザなしで入国できるからだと思います。なかには、日本を選んで来た人もいるかもしれませんが、こういう状態にされるとは知らなかった、という人がほとんどです。
ーー現在は30種類以上にも細かく分かれた在留資格の要件を満たさなければ、即不法滞在という扱いを受けてしまいます。
そうなると、原則として日本で働くことはできません。さらに、何らかの事情で国に帰れない人もいます。このことも多くの収容者を生む原因となっていますね。
トーマス:まず、在留資格制度を変えるべきだと思います。ウィシュマさんは留学の在留資格で日本に来ていましたが、学校を辞めざるをえませんでした。そうなると、現行の入管法では、在留資格がなくなり、原則としては日本にいることはできません。
しかし、彼女は男性からDVを受けており、母国へ帰ったら家族を殺すと言われ、母国へ帰れないという事情がありました。
それから、日本は働き手が不足しています。看護師やヘルパーさんなど、人手が足りていない。彼らは働く意欲があり、日本語ができる人も多いです。シェフなどの技術がある人も多くいます。にもかかわらず、政府は税金をかけて、彼らを入管に収容しています。
――確かに、人材不足を補うものとして、外国人労働者の存在は日々大きくなっています。
トーマス:そもそも、日本にはアメリカのように、外国人が日本に来て、死ぬまでそこで生活をするという発想がないのではないでしょうか。外国人を見れば、「いつ母国に帰るの?」っていう感じで。悪気はないとは思いますが、この人が日本にずっといるかもしれないという感覚がないんです、日本には。

たまたま日本に逃げて来たら…
外国人を「一時的な人手」としか見ていない
ライター、合同会社インディペンデントフィルム代表社員。阪南大学経済学部非常勤講師、行政書士。早稲田大学法学部卒業。行政書士としてクリエイターや起業家のサポートをする傍ら、映画、電子書籍製作にも関わる。
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