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「統一教会問題」、何が問題の本質なのか? リベラル各位、統一教会に加担することなかれ

―[月刊日本]―

野党各党の真摯で冷静な追及

統一教会

Nagahisa_Design – stock.adobe.com

 安倍晋三横死事件の後、にわかに注目をあつめた統一教会の問題に関し、立憲民主党と日本共産党が見せた対応は、迅速かつ正確なものだった。  なかでも目を見張ったのは、7月25日に行われた立憲民主党の対策チーム第1回目会合だ。講師は、この日参議院議員としての任期最終日を迎えた有田芳生氏。冒頭、有田氏は「議員最後の日にこのような講演をするのは感慨深い。1992年に桜田淳子さんの合同結婚式が話題になった際、連日、TBSの番組で統一教会の問題をジャーナリストとして伝えたが、その番組のキャスターが、いま、会場に座っている蓮舫さんだ。なんという巡り合わせだろう」と挨拶した。  注目すべきは、その蓮舫氏による講演後の質問である。  蓮舫氏はこう言う。 「統一教会が日本の政界に大きな影響を持っていると私は思わないんです。それよりも、乗っかってくることが問題。例えば去年、総裁選の時に岸田さんははっきりと子ども庁と言っていたのに、いつの間にか名称が、子ども家庭庁に変更されてしまった。これはいくつかの団体が複合的に動いた結果だと把握しているが、それをあたかも自分達(引用者注:統一教会のこと)の功績かのように言う。それが問題だ。そして周囲が統一教会をそう捉えることで、統一教会は新たな信者を獲得する際の材料にしていく。それこそが被害を生み被害者を苦しめる根幹だ」  蓮舫氏のこの発言は、統一教会問題を考える際に基本となる視点を余すところなく提供してくれている。  すなわち ・統一教会が日本の政治に大きな影響を与えているとは言えない ・むしろ統一教会の側が、政治に近づいてくる ・統一教会は、自分達の側から政治に近づき、その成果を宣伝材料に使う ・だからこそ統一教会は害悪であり、近づいてくる彼らを許容した政治家は痛烈に反省しなければならない という四つの視点だ。流石は30年前に有田芳生氏とともに民放番組で統一教会の追及を行っていた蓮舫氏だけのことはある。  日本共産党も冷静に統一教会問題を追及しようとしている。立憲民主党側に有田氏・蓮舫氏による30年の蓄積があるのと同様……いや、それ以上に、日本共産党には統一教会に関する知見の蓄積が大量にある。  なにせ統一教会の言う「勝共運動」の〝主敵〟は、日本共産党だ。日本共産党はこの50年、統一教会と対峙することを強いられてきた。その結果、日本共産党に蓄積された統一教会に関する知見は、日本随一と言っていいレベルに達している。  その知見にもとづく日本共産党の追及は冷静沈着そのもの。8月1日の志位委員長の記者会見発言や、7月24日付『赤旗』に掲載された柿田睦夫氏の寄稿文「旧統一協会の正体と歴史を暴く」から垣間見られるように、日本共産党は、統一教会問題を「推計で総額一兆円を超えるといわれる統一教会による霊感商法や高額献金の被害の問題」と「統一教会にお墨付きを与えてしまった政治家側の問題」だと、極めてシンプルに規定している。  このように、野党各党(維新・国民民主党を除く)は真摯かつ冷静な態度で統一教会問題を追及しようとしている。そこには「日本の政治を支配する統一教会」だとか「自民党の政策に影響を与える統一教会」などといった、陰謀論めいたうわつきは一切ない。

陰謀論にとらわれたリベラル系メディア

 しかし、野党の冷静さとは裏腹に、メディアや世論の論調はいささか的外れで常軌を逸したものになりつつあるようだ。  たとえば東京新聞が8月2日に掲載した「旧統一教会側と自民党、改憲案が『一致』 緊急事態条項、家族条項…濃厚な関係が影響?」なる特集記事などはその最たる事例だろう。  この記事はネットでも公開されているため是非お読みいただきたいのだが、驚くべきことに取材らしい取材がなされていない。記事の中にあるのは「自民党の憲法草案」の引用と「それに似通った統一教会の主張」の羅列と識者コメントのみという有様。記事タイトルから想起されるような「自民党と統一教会の改憲案が、どのような機序で一致したか」についての事実ベースの検証は全く行われていない。  この東京新聞の記事ほど酷い事例は流石に少ないものの、事件直後からしばらくの間は、朝日、毎日、東京などのいわゆる〝リベラル系〟メディアは、あたかも統一教会が自民党の〝保守的〟な政策の全てに影響を与えている/いたかのような論調の記事を乱発していた。それにつられて、「自民党は統一教会に洗脳されている」「自民党は統一教会に支配されている」などという奇矯な論調がネットでも流行し始めた。  これはかなり危険である。おそらくそうした論調の勃興を誰より喜んでいるのは、統一教会であろう。  先の東京新聞がとりあげた「自民党の改憲案」にせよ、「子ども庁の子ども家庭庁への改称」にせよ、統一教会の「考え」が自民党の政策に採用されたとは到底言い難い。「自民党の改憲案」とりわけいま自民党が掲げる例の「改憲四項目」は、統一教会ではなく、生長の家原理主義者グループの一人である伊藤哲夫氏が、自身の主宰する政策シンクタンク「日本政策研究センター」の機関紙『明日への選択』で過去10年書き続けてきたことのそっくりそのままの書き写しだ。 「子ども庁の子ども家庭庁への改称」にしても、統一教会ではなく、同じく生長の家原理主義者グループの一人である高橋史朗氏(氏がブログに寄稿した「安倍元首相の遺志と『和して同ぜず』の生き方を継承しよう」なる文章を参照願いたい)など複数の〝保守言論人〟が、安倍晋三の周りで暗躍し、安倍晋三を取り巻く側近政治家=山谷えり子など=の間で党内世論が生まれ、最終的に自民党内の総務会で名称変更が可決されるという機序を辿っている。どの話にせよ「統一教会の影響が!」などと言えるような代物ではない。
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統一教会が喉から手がでるほど欲しい評価
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