仕事

「変化を嫌う、職場の老害」が生まれるワケ。仕事が“10倍効率化”しても不機嫌に

契約書の電子化NG…非効率的な仕事が続くワケ

――業務効率化の提案をした際の反対意見としては、どのようなものが多いでしょうか。 元山:ある現場では、議事録や契約業務の書類作業に忙殺されている人がいました。契約書を紙で印刷して校正し、契印の押す位置を整えるための工夫をしているために契約作業が膨れ上がってしまったというようです。そこで「重要な契約はともかく、簡単な契約であれば電子化してみては」と提案してみたところ、担当者からお叱りをいただくことに。「契約書は大切なものだから、手を抜いたらダメ」ということでした。  ほかには、Excel作業で時間を使っている人にピボットテーブルの使い方を教えようとしたら「そういうことじゃない」とピシャリ。ピボットテーブルを使うことで問題が出るわけではないようでしたが、効率化することに抵抗感があるようでした。作業を効率化できる手段があっても頑張って手入力している状態を変えたくないというのは、不思議な話ですがよくあるパターンのひとつです。  弊社でも同じようなことが起きた経験があります。請求業務をおこなう際、経理上必要のない「明細書」を発行していたことが判明。領収書などの必要な書類とは別にほとんどの支払いに対して作っていたため、とても忙しそうでした。そこで「いらないんじゃない?」と提案したところ、「そういうものなので」という回答が。仕事の引き継ぎで教えてもらった業務だから、とまったく「不要な業務」と思っていないようでした。

仕事が10分の1になると困る人?

元山文菜

元山氏が講演したセミナーの様子(本人提供)

――なぜ非効率的な仕事を守ろうとする方がいるのでしょうか。 元山:先にもお話しした通り、人間は変化が苦手です。心理的ホメオスタシスと言いますが、私たちには本能的に「現状を維持したい」「変わりたくない」という感情が備わっているのです。だからこそ、その人の抱える「怯え」をくすぐってしまうと人は変化を制御するために一気に抵抗勢力化します。 ――「怯えをくすぐる」とはどういうことでしょう。 元山:「自分が必要とされなくなるのでは」「自分の影響力が薄れるのでは」といったようなその人にとっての不安をくすぐる心情をイメージしています。たとえば長時間の残業をしていた人が働き方改革で残業が禁止された場合、「頑張っている」と周りに認められる手段がひとつ、失われたとも言えますよね。  同じように、業務改善の結果「あいつがいなきゃダメな仕事」が「誰でもできる仕事」に変わるかもしれません。そうした時、仕事を担当していた当人が「必要とされなくなってしまうかも」と考えて反対するのではないでしょうか。事実として、「あの人に聞かなれば仕事が進まない」とチームに必要とされてきた生き字引のような方こそ、業務改善に懐疑的な目を向けるパターンは多い印象です。  また、従来の仕事量が10分の1になったら「新しい仕事を覚えなければならない」状態に。新しいことを覚えるのは大変なので、「大変だけど今のままでいい」という人が出てくるのだと思っています。会社のためにも自分のためにも、将来的には良くないことだと思うんですけどね。  現状維持というと聞こえは良いですが状態としては立ち止まっているにすぎません。これだけ時代の流れが速く周りが進んでいるのに、変化を拒むということは取り残されてしまうことにつながります。
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業務改善に大事なのは“伝え方”
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副業フリーライターとして2年活動したあと独立。子育ての苦労と楽しさを噛みしめつつ、マンガ趣味の影響で始めた料理にも全力投球している。クルマを走らせながら一人でカラオケするのが休日の楽しみ
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