更新日:2023年12月15日 16:20
仕事

内定辞退せず2社に就職?売り手市場の「トンデモ新入社員」母親がまさかの一言

会社側が出社を促すのは当然

 企業から男性への連絡やその母親の企業への抗議に対して、大津さんは「4月以降、企業からの電話にも男性は反応しない。4月1日に労働契約の効力が発生しているのだから、出社を促すのは当然です。母親が怒りの電話をしてきたようだが、これも的外れな主張です」と述べる。 「事例の男性の母親の言葉で『息子がそちらに入社しないこと自体が、内定辞退でしょう?』を日常生活で起こりうるケースに置き換えて説明すると、宅配ピザを注文しておき、家に届くと『気分が変わったからもういらない』とドアを開けず、受け取らなかったケースに似ています。  その時、『受け取っていないから、キャンセルが成立する』といった話は本来、ありえません。“注文したこと=契約を交わした”ということなのだから、ピザの会社が注文をした人に請求し、それに応じないならば損害賠償をすることは(実際にするか否かはともかく)当然と言えます。  こういう事例を知ると、働くうえでの最低限度の基礎知識は高校や専門学校、大学などで学んでおいたほうがいいとあらためて思います。最近は、売り手市場の影響で企業が採用のハードルを下げる傾向がある。結果としてこういう問題が生じやすくなっているとも言えるでしょう

働くうえでの最低限度の基礎知識は大切

大津章敬

大津章敬。社会保険労務士法人名南経営代表社員

 今回の取材をしていると、大津氏の指摘どおり、働くうえでの最低限度の基礎知識はつくづく大切と感じる。就職活動をする学生に限らない。社長や役員、管理職、社員、労働組合役員たちにも必要だろう。  入社から退職まで、労務トラブルになりうるポイントがある。例えば、配置転換(人事異動)、転勤、出向や転籍、賃金の支給、労働時間の管理や残業、有給休暇などだ。法律など一定のルールがあるにもかかわらず、それぞれが独自の考えや判断で行動をとるケースもある。人間関係の摩擦や不毛な労使紛争は、こんな些細なところから始まるのではないか。 <取材・文/吉田典史> 【大津章敬(おおつあきのり)】 1994年から社会保険労務士として中小企業から大企業まで幅広く、人事労務のコンサルティングに関わる。専門は、企業の人事制度整備・ワークルール策定など人事労務環境整備。全国での講演や執筆を積極的に行い、著書に『中小企業の「人事評価・賃金制度」つくり方・見直し方』(日本実業出版社)など。全国社会保険労務士会連合会 常任理事
ジャーナリスト。1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006年より、フリー。主に企業などの人事や労務、労働問題を中心に取材、執筆。著書に『悶える職場』(光文社)、『封印された震災死』(世界文化社)、『震災死』『あの日、負け組社員になった…』(ダイヤモンド社)など多数
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