「こいつはセクシー女優だし」と見下してほしかった
――……。
戸田 あと、私は学校の成績がよくて、文章を書くのが得意で、小論文とかもすごく評価されていた。自分が愛読していた「ロッキンオンジャパン」にも投稿していて、何回か掲載されていました。今思うと大したことないけれど、当時の友達からしたら、「才能あっていいよね~」と嫉妬もされました。それも、自分のせいで彼女を傷つけた……って思ってしまった。自分の近くにいる誰かが、嫉妬なりで自分自身を嫌いになるのを見るのが本当に嫌で、自分のせいで他人が傷つくくらいなら、私のことを見下してくれた方がいい。
――見下す手段が、セクシー女優ですか?
戸田 セクシー女優は見下していい職業だ、という考え方は完全に間違っているものだといい切れるのですが、それとは別に、普通のモデルやアイドルと違う、圧倒的に「弱み」を見せる危うい職業だとは思っていて。普段水着で隠れる箇所を見せるし、モザイクはかかっていますが、性器って内臓なわけで。内臓まで晒している、そういう感覚が消えない職業ではあると思っています。そして、それを見ることで「弱みを握った」と勘違いする男性もいるし、「すべてを見せてくれている」と受け取る人もいる。女性関係に恵まれなかった、セックスの機会を手に入れられなかった人たちの中には、女性を逆恨みする人もいるし、畏怖の対象になってしまう人もいる。そういう状況で、彼らの心にアクセスするには、こちらが先に開かないといけない。「私はあなたに弱みを晒しているし、あなたが時には見下すだろう可能性も解った上で、それで気が済むなら見下してくれていいから、怖がらないで話を聞いてほしい」というアプローチだったんです。正しいことを言っても、相手が受け入れられる精神状態ではないときは、「こいつはセクシー女優だし」ってどこかで見下してくれるから、傷つけなくて済む。羨ましがられないし、怖がられない、そういう場所って居心地もよかったですよ。
――セクシー女優になったことに後悔はない?
戸田 ないです。性産業に従事した人間は“汚れている”っていう偏見もあるけど、あーあ、汚れなかったなって感じ。もちろん、大変だったこと、嫌だったこと、傷ついたこと、今思い出しても憤慨するようなことはいくらでもあります。でも、仕事をする中で傷ついたことと、私が「汚れる」みたいな感覚はまったく別だし、周りの女優さんを見渡しても本当にみんな身も心もきれいだった。全部のしんどさを差し引いても、結果として良かった方があり余っています。ただ、真似はしないで欲しい。それは私がたまたま頑丈だったからというだけで、信じられないような過酷なこともあるし、人生全体への影響があまりに大きい。今幸せなのも、「セクシー女優になったから」ではなく、そこから始まった縁や経験をきっかけに、自分で手繰り寄せたもの。セクシー女優になれば道が拓ける、というわけではない。でも、今私は人生で一番ハッピーだよってことは、ちゃんとみんなに知って欲しいです。
――しんどい時期もあったんですね。
戸田 十年は続けようと前向きに思っていた時期もありましたが、最初にしんどくなったのは、当時の単体女優ものではかなり過激な内容の痴漢凌辱物に出たときですかね。内容も体力的にも本当にしんどくて。結構ボロボロになっちゃって。もう、やってけないな~と思ったんですけど、その頃ってコロナ前だったので、イベントでファンのみなさんに会う機会がすごく多くて。応援してくれている人たちの顔が見えると、まだ頑張りたいなって思えるというか。でも、AVにおける「頑張る」、って何のことなんですかね?(苦笑)